本当にあった(ある意味)怖い話 ヨーロッパ旅行で パート1
この前、ぼくが体験した怖い話について、ここに書いたんだけど、ぼくは、その一年後、通勤途中で事故にあってしまったんだ。連日、変な時間まで仕事をしていたことが原因だったんだけど…。つまり、過労状態で、高速道路で自損事故をしたんだ。幸い、ぼくの車が壊れただけで、ぼく自身けがもなく、巻き添えになる人もいなかった。
ぼくは、この事故がきっかけで、その会社を退職し、かねてから考えていた海外旅行にでかけたんだ。その詳しいいきさつはおいといて、その海外旅行で起きた恐怖体験について、書いてみたいと思う。だけど、前に書いたみたいな恐怖とは全く異質な、「ある意味」怖い話なんだ。
本当は旅行に出る前にも説明しないとならない事情があるんだけど、それは面倒くさいから、旅行が始まっているところから話を始めようと思う。
お金を持っていないぼくは、ユースホステルっていう、ベッドだけを借りて、知らない人と相部屋で宿泊する施設に泊って旅行をした。その日、ぼくは、ベルリンのユースホステルに泊ることにした。
夕方五時ころに、ベルリンに着いて、泊ろうと思っていたユースホステルに行くと、ラテン系のイタリア人ぽい男性が受付に立っていた。ぼくは、どこに行くときもそうなんだけど、予定を立てない。ほとんど、そのときの思いつきで行く先を決める。そんな事情もあって、当たり前のようにユースホステルに事前予約はしていなかった。ガイドブックには「人気があるので予約が必要」と書いてあったし、少し不安だった。
ぼくが、少しかじっていたドイツ語で
「三泊できますか?」
と尋ねると、その男性は、少し驚いた顔をしてから、パソコンをパチパチやって、
「大丈夫だよ」とドイツ語で答えてくれた。
そして、ドイツ語で「この紙に名前と住所を書いてくれて」と言った。
ぼくがその紙にいろいろ書いていると、彼は、日本語で「ドイツ語上手ですね」と言った。
ぼくが、驚いた顔をして「アーバー、ヴェーニヒ(だけど、少しだよ)」と答えると、
今度は英語で、「こうゆうときは日本語で何と言うんだ?」とたずねてきた。
ぼくは、大して英語ができるわけでもない。しかも、疲れていたんだけど、英語で「このいろいろ紙に書くことを頼むときのことを、日本語でなんと言うか知りたいのかい?」と言った。
ああ、自分でもわかっていたさ、ぼくのしゃべっている英語がなんかおかしいことくらい。
わかっていたけど、彼の好意と語学への熱意に応えるために、がんばって英語をしゃべったんだ。
ぼくが、その言葉を終えるか終えないかのときに、彼の眉間にはしわがより始めていた。
だけど、ぼくは、押し切ったんだ。雰囲気でその場を押し切って、「『おねがいします』と言えばいいんだよ」とその拙い英語でしゃべり切った。
彼は、ぼくの押し切りに負けたみたいで、その紙を出す動きをして「おねがいします」と言った。
ぼくは、親指を立てて「ヤー、グート(うん、いいね〜:yes good!)」と言った。彼も満足そうな顔をしていた。
ぼくも「ああ、良かった」と思って、部屋に向かおうとしたそのときだった。
「日本人はみんな英語がしゃべれると思っていた」
彼は確かにそう言ったんだ。
ほとんど彼に背を向けていたぼくは、もう、彼の顔を見ることができず、右手をあげて
「オー、ソーリー」と言って、その場を離れて部屋に向かった。
ある意味怖い話のまとめ
http://d.hatena.ne.jp/keigossa/20130331/1364694606