本当にあった(ある意味)怖い話 ヨーロッパ旅行で パート4

時間は前後するんだけど、おとといイタリア篇を書いたことがきっかけで、ぼくは、フランスはパリで起きた、とんでもない恐怖体験を思い出してしまった。そして、そのことについてどうしても書きたくなってしまった。だから、時間はかなり前後するんだけど、イタリアに向かう前に起きたこの恐怖体験について物語ってみたいと思う。

ぼくは、パリに居る間、かの有名なルーブル美術館と、パリ郊外にあるヴェルサイユ宮殿などに行ってみた。そのときの話もいつかしたいと思うんだけど、今回は、恐怖体験についてだけ語ろうと思う。

今回の話は、実はいつもとは趣が少し違うんだ。っていうのも、今までの話は、ぼくが恐怖する体験だったんだけど、今回は、ぼくが人を恐怖させてしまった話だからなんだ。

ぼくは、ルーブル美術館に行ってから、かなり満足して、その日に部屋を取ったユースホステルに帰って行った。ぼくが旅していた間に食べていたものは、はっきり言って、粗食だった。あのころは、1ユーロ170円というすごい円安だった。だから、お金を持っていないぼくは、そういう選択をするより仕方がなかったんだ。もちろんそれ以上に、レストランとかに一人で入る勇気が無かったこともある。とにかく、そんなこんなで、ばくは、安そうなスーパーで、パンとか缶詰とか、飲み物とかを仕入れて、それでなんとかしのいでいた。ユースホステルは大体朝食付きだったから、それも重要な栄養源だったかもしれない。

そのユースホステルは、パリの郊外だったから、少し大きくて、いろいろなものが置いてあるスーパーが近くにあった。いろいろ物色していたんだけど、ぼくはあることを思い出してしまったんだ。そう「ワインと言えばフランス」ということを。これは、パリに向かっている途中から考えていたことだったかもしれない。とにかく、ぼくはフランスのワインを飲んでみたいという気持ちにはやっていた。

そして、このわりと大きいスーパーには、運よくお酒が置いてあって、ワインもたくさんの種類があった。これよりなによりぼくにとっての幸運は、ワインが安いということだった。酒税が安いのか、どういった理由なのか、よく分からないけれど、そのスーパーにあったワインは、なんと3〜10ユーロだった。瓶の大きさは日本のものと同じ位だったし、決して高くない、むしろ恐ろしく安いと思った。そういったわけで、ここでワインを買った。銘柄までは覚えてないけど、ぼくは赤ワインが好きだから、赤ワインの4ユーロのやつを買うことにした。

意気揚々とレジに進んで、これを買うと、一目散にユースホステルに帰って、これを飲んでみることにした。

だけど、ぼくは、「コルク抜き」を持っていなかったんだ。時間はもう夕方の7時だったし、ヨーロッパにはコンビニなんてない。ぼくは、そのワインをどうしても飲みたかったから、持っていた爪切りとかピンセットとかを駆使することにした。1時間は経っていたと思う。だけど、ぼくは諦めなかった。なんとか頑張って、4㎝ほどあるコルクをなんとか破壊し、ついにその液体の部分まで、ぼくはたどりつくことができたんだ。

だけど、もちろんぼくはコップなんて持っていない。ぼくは、奪取したその液体を摂取するために、瓶を手に持つと、まるでラッパを吹く時のように、今度はその瓶を口に近付けた。そう、みんな知っていると思うけど、そのワインを「ラッパ飲み」したんだ。コルクが瓶の中に少し残っていたから、ぼくの喉がその液体を飲みこむスピードに、液体が落ちてくる速度が追い付いてこないほどだった。

とにかく、すごい飲みやすくておいしいワインだったんだ。このワインを飲むまでの苦労とかも関係しているだろうし、もちろん、旅の疲れと楽しさも関係していたと思う。だけど、本当に格別にうまいワインだった。飲む前は、残したらどうしようとか考えていたんだけど、ぼくはすぐに考えを改めた。「これなら余裕で全部飲める」

そんなこんなで、ぼくは、ユースホステルの部屋で、一人でラッパ飲みしていた。このパリのユースホステルは、汚らしいベッドが二つ並んだ狭い部屋だったんだけど、ぼくがワインを飲み始めるそのときまで、もう一つのベッドに泊るはずの人は来ていなかった。ぼくが、ワインをラッパ飲みしたのも、ベッドは二つあるけど、今日はぼく一人しかこの部屋を使わないと思っていたからだった。ぼくは、下着姿でベッドの上にあぐらをかいて、窓から少しだけ見えるパリの夜景を見ながら、ワインをひたすらにラッパ飲みしていた。

だけど、ぼくがワインを半分くらい飲んだ時に事件は起きたんだ。

「コンコン」とノックの音がするかしないか、すぐにドアが開いて、誰かが入ってきた。

入ってきたのは、金髪のこれまたアキバ系の若者だった。彼は、ぼくの方を一瞬見たんだけど、何も見なかったようなフリで、自分の荷物をロッカーに片づけ出した。ぼくは、

「ハロ〜」

と、彼に声をかけてみた。

すると、一瞬こちらを見て、

「hello」

と彼は言った。

ぼくは、このワインがとてもおいしかったし、何よりも少し酔っぱらっていたんだけど、この彼の返事を聞いてすごく安心して、瓶を彼の方に差し出すと、

「Do you drink〜〜^^?」

と言った。

そしたら、彼は、両手を顔の高さまであげて少し握りこぶしにし、腕を額の前でクロスさせると、そこでなんか「気」らしきものを少しをタメていた。そのタメの時間は数秒だったと思うけど、今度は両方の腕をすごいスピードで前に出しながら、手のひらをぼくの方に向けて、目いっぱいに指を大きく開けてこう言ったんだ。

「ノォオッッッ!!!」

こんな勢いで酒を断られることは、たぶん、これが、最初で最後になると思う。

ちなみに、次の日、土産屋でいかにもパリって感じのコルク抜きを買うと、ぼくはまたワインを買って一人部屋でラッパ飲みした。彼は、ぼくが寝るくらいの時間まで帰ってこなかった…

ある意味怖い話のまとめ
http://d.hatena.ne.jp/keigossa/20130331/1364694606