本当にあった(ある意味)怖い話 ヨーロッパ旅行で パート3

ぼくの、この海外旅行の怖い話シリーズも、これで三回目になるんだけど、実は、この怖い話シリーズでは、これからここに書くイタリア編を書きたかっただけなんだ。今までのパート1パート2は、このイタリア編のための序曲に過ぎない。

もしかしたら、パート1とパート2だけでも、背筋も凍るようなおぞましさを感じたかもしれないけど、今回のイタリア編はそれをはるかに上回るような、すごい「恐怖体験」が詰まっているんだ。

本当は、ベルリンからイタリアに行くまでの間に、他にも「恐怖体験」があったし、そのことも書きたいんだけど、そのことはまた今度にしようと思う。って言うのも、ぼくの小中高の同級生で友だちのマッツァンティーニ(写真)

が夫婦でイタリア旅行に行くらしくて、是非ともイタリアの話を聞きたいっていうんだ。だから、ちょっと予定を早めて、このイタリア編を書いてみることにした。えっ、イタリア人がどうしてイタリアに旅行に行くかって?まあ、写真を見てもらうと分かると思うんだけど、目の所に黒い線が引いてある。要は「わけあり」ってことなんだ。

よし、前置きはこれくらいにして、イタリアの話を始めたいと思う。

ぼくは、ベルリンからパリを経由してイタリアはローマに向かった。

このとき乗っていた列車は、寝台列車だった。ぼくは「ユーロパス」っていう、三週間の間はEU圏の鉄道全部のしかもファーストクラスに乗れる切符を持っていた。鉄道のファーストクラスって日本にはないけれど、ヨーロッパではどの国にもあって、簡単に言うと、新幹線のグリーン車みたいなものだ。

ヨーロッパでは、普通列車ですら、ファーストクラスと普通の席の車両に分かれている。今思えば奴隷制度とかの差別の名残なのかもしれない。それとも、日本よりももっと金だけが物を言うのがヨーロッパということかもしれない。

とにかく、ぼくはファーストクラスの席に乗れる権利はあったんだけど、予約が遅かったから、この寝台列車ではファーストクラスには乗れなかった。昼の間は、座席に座っていた。確か、フィリピン系の家族連れと、25歳くらいのアキバ系のイギリス人男性が同席だったと思う。ちょっと記憶が曖昧なんだけど、この男性とは少し話をして、コンピュータ会社に勤めていて、長期休暇がもらえたから旅行に行くんだということだっと思う。

フィリピン系の家族連れの方は、おばあさんらしき人、母親らしき人、幼稚園児くらいの少女二人という女所帯だったと思う。この人たちとはあまり会話とかした記憶がない。長々と同席した人についての説明をしたのも無駄じゃない、なぜなら、ここでもちょっとした恐怖体験があったからなんだ。

昼の間は良かった。昼の間、ぼくは本を読んでいたし、イギリス人男性はうとうとしていいたし、この家族連れは普通の家族連れらしい行動をしていた。

そんな普通の時間が流れていたんだけど、なんか、フランス人かイタリア人かの大学生数人が、アンケートをするからって、ぼくたちの座席に来て、アンケートを書いてくれと英語でしゃべってきた。だけど、その英語が明らかにへたくそで、なんとなくたまに英単語らしきものが聞こえる程度だった。多分、日本語で言うなら、「福井弁」が一番それに似通っていると思う。つまり、イントネーションが全然違うんだ。ぼくは、何を言っているか全然わからなかった。

そういえば、ローマの駅でも同じことがあった。ローマの駅に着いた時だったか、詳しく覚えてはいないんだけど、駅員のおっさんに何か聞きにいったら、そのおっさんも、明らかに英語をしゃべっているのに、何を言っているのか全然分からなった。だから、この大学生やおっさんがイタリア人で、イタリア人は変なイントネーションの英語になるのだろうと思っていた。

だけど、そんなことはないんだ。そのおっさんが何を言っているか分からなかったから、少し離れた別の窓口で、今度は若い女性の駅員さんに聞いてみたら、何を言っているのかよくわかった。つまり、こういうことなんだ。

言語が違う人が意志疎通するためには、1.伝えたいという気持ち、2.聞きたいという気持ち、3.相手への興味、この三つが一番必要ということなんだ。

これは、ぼくの海外体験全てを通して言えることなんだけど、女性が何を言っているかはわかるのに、男だとわからない。仕事やる気のない人だと何言っているのか分からないのに、仕事やる気ある人や切羽詰まっている人は何を言っているのかわかる。

言うまでもないことだけど、ぼくは男だし、男よりも女性の方に興味があるし、相手だってそれは同じなんだ。だから、こういったことが起きるんだと思う。ただし、前のドイツのフレンドリーな人みたいに、男でも何を言っているか分かる人もいる。ちょっと話はそれちゃったんだけど、海外に行くとき、これは知っておいて損はないことだと思う。

それで、この寝台列車で起きた恐怖体験についてなんだけど、夜になったとき、駅員さんがまわって来て、「ベッドを組み立てて寝てくれ」と言ったときに、事件が起きた。ぼくとさっきの男性、ちなみにこの男性は女の子たちから指差されて「イエス、イエス」と言われてたような気がする。とにかく、イエスキリストっぽい風貌だったんだ。まあ、それはいいとして、ぼくたちが、上の収納箱からベッドの部品を出してベッドを組み立て終わり、切符を確認し、自分に割り当てられた場所、つまり下の座席を寝床にしたところで寝ようとした、そのときだった。

この女所帯の人達が、上に組み立てられたベッドを見て、そこを指差し、急にヒステリックになったんだ。

「ali4 jggdfmp4483u09o?LKFPJGU$)T!」

多分、この女所帯の人達はフィリピン人だったんだと思う。余りの驚きに現地語で何か叫んだあと、これまたわかりにくい英語で、「わたしたちはこんなところでは寝れない」といったようなことを言っていたと思う。ちょっと何を言っているのかわからなかったから、イギリス人男性を見たら、やっぱりその下手くそな英語は、ネイティブにも通じてなくて、首をかしげていた。少し時間が経つと、意味がわかったみたいで、ぼくの方を見て「上で寝よう」と言ってきた。ぼくは別にどこで寝たっていいから、「イエス」と快諾して、上で寝ることにした。

ぼくとこのイギリス人男性は、はしごを使ってベッドに登り、シーツを敷き終わると、ベッドの上に座り、天井にぶつかりそうな頭を傾けて、少し呆れた顔をしてお互いの顔を見た。下では、この女所帯の人達が座ったままの体勢で寝ようとしていた。ぼくとこのイギリス人男性の間には、座席の通路と同じ分だけの距離があったし、何も言葉は交わさなかったけれど、何を言いたいのかはとても分かった気がした。

ある意味怖い話のまとめ
http://d.hatena.ne.jp/keigossa/20130331/1364694606