わかりやすい論語15 適材適所

はじめに
 適材適所という言葉は、みなさん一度は聞いたことがあると思います。適材適所とはどういった意味なのでしょう。論語の言葉を頼りにこの言葉の意味をわかりやすく解説します。そして、次回の「わかりやすい論語16」で、どうしたら適材適所の配置ができる人になれるのか。ということを紹介する予定です。今回は、適材適所とはどういうことなのか?ということを考えてみてください。これは、良いリーダーとなる上で最も重要なことと言えるでしょう。また、良いリーダーを見極める上でもとても大事なことです。


子曰く、君子は事(つか)へ易くして説(よろこ)ばしめ難(がた)し。之を説ばしむるに道を以てせざれば説ばず。その人を使うに及んでや之を器(うつわ)にす。小人(しょうじん)は事え難くして説ばしめ易し。之を説ばしむるに道を以てせずと雖(いえど)も説ぶ。その人を使うに及んでは備わらんことを求む。

子路第13より)


現代語訳
君子(立派な見識を持った人)とは、その人の下で働くことはとても簡単だけれど、喜ばせるということは難しい人である。その人は、道理にあったことでないと喜ばない。そして、人を使うときは、その人を器にするからだ。(これに対して、)小人(とるに足らないつまらない人)とは、その人の下で働くことはとても難しいことであるけれど、喜ばせることは簡単な人である。その人は、道理にあっていないこと(例えばわいろや、媚びへつらい、本心で無いお世辞など)で喜ぶ。そして、人を使うときは、その人に自分の要求する資質が備わっていることを求めるからだ。


解説
 実は、適材適所の考え方を、わたしたちは普段の生活で頻繁にやっています。あなたは、熱いコーヒーを飲む時、どんな器を使いますか?決まっています。コーヒーカップです。では、のどが渇いていて、熱いコーヒーをたくさん飲みたい場合、あなたは大きいものと小さいものどちらを選びますか?熱いまま沢山飲みたい場合は、小さいので何杯も、そうでない場合は大きいもので一杯のコーヒーを飲むでしょう。

 実は人の使い方もこれと同じことなのです。「その人を使うに及んでや之を器(うつわ)にす。」とは、その目的に応じて、それにあった人材を選ぶという意味なのです。人は、柔軟性や適応性があって、コーヒーカップのように単純ではないし、時として、自分の思った通りになんとかしてくれることもあります。だから、ここで少し勘違いしてしまうのです。

 力仕事を腕の細いか弱い女性に任せる人が居るでしょうか?居るかもしれませんが、ほとんどいないし、そんなことをしたら、皆から白い目で見られるでしょう。ですが、もしそのか弱い女性が責任感の強い人であったなら、なんとかしてその力仕事をやってしまうかもしれません。ここが、人間を選ぶときと器を選ぶ時の一番大きな違いです。そしてまた、この違いがあるからこそ、「その人を使うに及んでは備わらんことを求む。」人がいるのです。

 「その人を使うに及んでは備わらんことを求む。」人がやっていることは、例えば、きれいなガラス細工のコップに、焼きたての骨付きカルビを入れるようなことなのです。それはそれでなんとかなるかもしれませんが、全く適切でないことです。

 ただ、本当の仕事となると少しことは複雑になります。例えば、責任感の無い人に仕事を任せたら、責任が全てあやふやになってしまい、誰が何を受け持っているのかわからなくなるでしょう。計算が早い人には、事務処理や書類整理をやらせるより、帳簿をつけてもらった方がいいでしょう。このように、適材適所とは、その仕事にあった人を選ぶことであり、入れるものにあった器を選ぶことと同じことなのです。

 そして、もう一度最後に、論語のことば、または、現代語訳を読んでみてください。そこには、適材適所ができる人とそうでない人の決定的な違いが記されています。また、ここでは適材適所がどういったことであるのかを解説したに過ぎません。適材適所は、意味を知っただけではできません。それの“もと”がある人になるためにはどうすればいいのか。次回に紹介する予定です。


わかりやすい論語まとめ
http://d.hatena.ne.jp/keigossa/20120207/1328611563

日本人の精神 『大学』

おまけ 英訳

Confucious said.
It is easy that one works under Kunshi,and it is difficult that one brings satisfctions to Kunshi. Because he will satisfy with only justice atittudes. And he uses others as uses appropriate tools.
It is difficut that one works under Syoujin,and it is easy that one brings satisfactions to Syoujin. Because he will satisfy with unjustice ways. And he uses others with his own request.