わかりやすい論語16 この世で一番自分の思い通りになる人

はじめに
 前回のわかりやすい論語15でお約束したように、今回は、適材適所のできる人になるにはどうすればいいかを、他の論語のことばを通して紹介します。わかりやすい論語15と合わせて考えてみてください。


君子は諸(これ)を己に求め、小人は諸を人に求む。

(衛霊公第十五より)


現代語訳
君子(立派な見識を持った人)は、もろもろのこと(の責任)を自分に求める。小人(取るに足らないつまらない人)は、もろもろのこと(の責任)を人に求める。


解説
 この言葉を理解するためには、まず自分を知らなければなりません。今、あなたは立ち上がって、手を使わずに、右足のつま先をあなたのおでこに当ててみてください。できましたでしょうか?今、わけのわからないことをさせましたが、これができる、できないは、別にどうでもいいことです。ですが、ほとんどの人は「それを難しいことだ」と思ったはずです。

 今、あなたは、自分の体を思い通りに動かすことすらできないのです。ましてや、人を思い通りに動かすことができるでしょうか?なんでもすべては、こんな簡単なことなのです。自分を自分の思った通りにもできないのに、人を自分の思った通りにできるわけはないのです。この世の中で、最も自分の思い通りにできる人間は、ほかならぬ自分でしかないのです。

 だから、君子は、まず自分のことを考えます。失敗があったら、まず自分に失敗の責任が無かったかを考えます。この世で一番自分の思い通りにできる人間、つまりそれは自分自身のことを考えるのです。そして、「自分がこれだけのことができていれば」と努力への糧にしたり、「自分があの時気がついていれば」と反省したり、「自分があのときあんなことしなければ」と悔悟したりするのです。こうして、一番自分の思い通りになる人間、自分自身を変えようと思い立ち、失敗を成功に転じるのです。

 普段から、このような考え方をしていれば、人は、自分以外の人のことを自分の思い通りにしようとは思わず、むしろ、その人がどんな人で、どんな長所や短所があるのかを考えます。このような心がけをすることで、適材適所ができる人に自然となれるのです。

 ですが、これは簡単なことではありません。誰だって、自分の悪い部分を見ることは苦痛なのです。そして、人のせいにすることはとても簡単なのです。けれども、その苦痛の方のことをしっかり考えないと、本当の解決からはむしろ遠のいてしまうのです。


おまけ 英訳

Confucious said.
Kunshi seeks every resposebility for himself.
Syoujin seeks every resposebility for others.

わかりやすい論語まとめ
http://d.hatena.ne.jp/keigossa/20120207/1328611563