わかりやすい論語4 例えばこれが「仁」

はじめに
論語を通して語られている「仁」とは一体何でしょうか。今回は、それにせまります。


子曰く、巧言令色鮮し仁。

(学而第一より)


現代語訳
(事実の半面を捉えるような)うまいことばかり言って、(本当は全然好きでないも無い人に、媚びへつらって)いい顔ばかりしている人には、仁という徳がほとんどない。


解説
 巧言とは何でしょか。それは、「巧みな言葉」と言えるかもしれません。では、どんな言葉が巧みな言葉なのでしょうか。例えば、ある人が「私はどんな人だと思いますか。」と尋ねてきたとします。その時に「あなたは立派な人であると、Aさんは言うでしょう。」と答えた人がいるとします。これはとても巧みで、不誠実な言葉です。なぜなら、この答えは「巧みに」その人にお世辞を言いつつ、そして「巧みに」自分の意見を言っていないからです。これは、質問者から逃げるための「巧みな返答」です。論語を学ぶ人は、このような答えをしてはなりません。友だちも減りますし、自分を信用してくれる人はいなくなります。質問をする人は、その人の意見が聞きたくて、その人に質問するのです。なのに、この答えた人は、自分の意見を言わないばかりか、その人の喜びそうなことを言ってその場を切り抜け、さらに、第三者のAさんに自分の言葉の責任をなすりつけているのです。このような不誠実な言葉ばかりを言う人に、「仁」(相手を思いやる気持ち)があると言えるでしょうか。こんな「巧み」なことばかり言われていたら、言われる方は、「自分に本当のことを言ってくれる人はいない」とさみしくなってしまうでしょう。それに、その人の悪いところが指摘されることが無くて、その人はいつまでたっても、自分の悪いところを直せないかもしれません。だから、「巧みな言葉」ばかり言う人には、人に対する思いやり「仁」がほとんどないのです。

 次に、令色とは何でしょうか。令は命令という言葉もあるように、「〜させる」という意味の言葉です。色は顔色のことです。これらの意味を併せると、令色は「顔色を作る」という意味になります。では、皆に、無理にでも作った笑顔で接することは悪いことなのでしょうか。そんなことはありません。いつも笑顔でいることは、悪いことではありません。笑顔というのは、人の気持ちを温かにするものです。でも、人を温かにする笑顔は、心に「仁」という徳があってこそやっとできるものなのです。だから、心のなかに「仁」という人を思いやる気持ちがあるならば、顔は自然と笑顔になるのです。「仁」がないひきつった作り笑いの笑顔は、逆に相手を不快にするばかりなのです。このように、相手を思いやる気持ちが無い言葉を「巧言」と言い、相手を思いやる気持ちのない顔色を「令色」と言うのです。君子は、本である「仁」人を思いやる気持ちを持つように務めるようにするのです。

 では何故、この章では、敢えて禁止するような言い方をしているのでしょうか。それは、「仁」を得ることより、「巧言」や「令色」をすることの方がはるかに簡単であるからです。そして、「仁」のない言葉を言って相手を喜ばせるくらいなら、気の効いたことなんて言わない方がはるかに良いからです。「仁」のない笑顔をして相手を喜ばせるくらいなら、無愛想な顔をしていた方がはるかに良いからです。人間は、楽な方、簡単な方にすぐに流れてしまいます。皆から良く思われたいがために、巧言や令色をすぐに使ってしまうのです。だから、それを戒めるために、禁止するような言い方がしてあるのです。

日本人の精神 『大学』

わかりやすい論語まとめ
http://d.hatena.ne.jp/keigossa/20120207/1328611563

おまけ 英訳

Confucious said.
A forced smile and an empty flattery dose not contain "Jin" at all.
"Jin":compassion and love