わかりやすい論語14 死して後己む

はじめに
 この世の中に何の不安も無く生きている人がいるでしょうか。この世の中に何の苦しみも無く生きている人がいるでしょうか。人は、悩むからこそ人であり、苦しむからこそ人なのです。今回は、論語の言葉から、この悩み苦しみとの向き合い方を紹介します。


曾子曰く、士は以て弘毅ならざるべからず。任重くして道遠し。仁以て己が任となす。亦重からずや。死して後己(や)む。亦遠からずや。

(泰伯第八より)


現代語訳
士は、心が広くて強くなくてはならない。なぜなら、その背負うものは重くて、行かなければならない道は遠いのだから。仁という荷を自分に背負うこと、これはまた重いことではないではないか。死んでやっとその荷を下ろせること、これはまた遠いことではないではないか。


解説
 生きているということは、重い荷を背負って、遠い道を歩くことです。もし、あなたの荷が軽いなら、あなたはまったく充実した人生を送っていないでしょう。なぜなら、充実とは、苦労の見返りであるからです。もし、あなたの先にある道が近くまでしかないのなら、あなたは今を大事にしていないのでしょう。なぜなら、人は自分の前にある長い道のりを見た時こそ、準備を怠らず今を大事にするからです。

 そうして考えてみるに、大きな荷物を背負ったときほど、人は充実し、また、長い道のりを乗り越える覚悟を持った時こそ、人は今を大事にするのです。そして、この世の中で最も重い荷物こそ、「仁」であり、それを背負うことが本当の充実であり、この「仁」がどれだけ得難いものであるかを知ることで、今を大事に生きられるのです。

 このような大きな荷物と道のりを自分の任とするならば、今のあなたの悩みも苦しみも、それに比べればちっぽけなものなのです。あなたは悩み苦しむ必要はありません。あなたは、その悩み苦しみを越えるだけの、大きな目標を持ったからです。

 「仁」の形は、人によって様々です。あなたは、あなたの「仁」を探し、そして、それを真っ向から見つめて、しかとその背に背負ってください。


わかりやすい論語まとめ
http://d.hatena.ne.jp/keigossa/20120207/1328611563


おまけ 英訳

Sousi said,
A man should have large and strong heart.
Because your resposeblity is so heavy,and the road which you must go is so far.
If you carry "Jin",your burden is so heavy.
And you can free from that after you die.
The road for "Jin" is so far.