24.荀子 現代語訳 栄辱第四 一・二章
栄辱第四
一章
おごり高ぶりと居直りは人に災いをもたらし、慎み深さとつづましやかさはどんな武器をも退ける。槍や矛のするどさも恭倹のするどさには及ばない。(●驕泰は人の殃なり。恭倹は五兵をもしりぞく。戈矛の利有りと雖も恭倹の利に如かざるなり)
だから、人に善いことを言うなら(愛語をするなら)それは毛布よりも暖かく、人を傷つけるのに言葉を用いるのならば、その傷は槍や矛の傷より深いものとなる。(●人に善言を与うれば布帛よりも煖く、人を傷つくるに言を以てすれば矛戟よりも深し)
だから、広大な大地でも安心して立っていられないのは、大地がグラついているからではない、つま先立ちしても足の置き場がないこと、これら全ては言葉にあるのだ。
大道を行けば、そこは多くのなじりによって乱され、小道を行けば、そこはそこでいつ危険に出くわすとも限らない。慎しまないでおこうと思ってもそれはできることではない。
二章
すんなりと事が運んでいるはずなのに、滅びてしまうのは、怒るからである。
思慮明察であるのに、危害を蒙るのは、逆らうからである。
博識であるのに、追いつめられるのは、そしるからである。
身を清くしようとしてどんどん濁るのは口である。(●清からんと欲して愈々濁るは口なり)
うまく育もうとしてどんどんやせ細ってしまうものは人付き合いである。
議論して喜ばれないのは、争うからである。
しっかりと自分を保持しているのに、人から認められないのは、勝り凌ぐからである。
廉潔であるのに、人から尊ばれないのは、潔癖を保つために人を傷つけているからである。
勇猛果敢であるのに、恐れられないのは、先で得られるものを貪るからである。
裏表がなく実直であるのに、大事にしてもらえないのは、独断をするからである。
これらのことは小人が勤めて行うところで君子はしないことである。
まとめ
http://d.hatena.ne.jp/keigossa/20130104/1357283885
解説及び感想
■一章で栄辱の要は口にあることを明らかにし、二章でその口が動くところの原因とそのことによって起こる禍を明らかにしている。
■二章については、実に明晰であると思う。古今東西で、これほど、これらの因果関係を明確に記した書物は、荀子以外にないであろう。それとともに、私を含めて多くの人が特に気をつけなければならないことと思う。善いことと悪いことは紙一重で存在し、少しでも偏ると、己を害するばかりか人を害してしまうものである。これはとても微妙な働きである。ちなみに、他の書物だと、このように明確に記すのではなくて、例えばなしや実例によってこれらのことが示されていることが多い。
■この二章については、私が随分漢字の意味を下しているから、ここに分かりやすい表として示しておく。これらのたとえ一つだけでも、自戒して保持するならば、その効能は計り知れないだろう。
一番初めに自分の状態→変化する様子・自分の受ける状態・結果→原因(真の正体)と挙げる。
快快 亡 怒
察察 残 逆
博 窮迫 訾
欲清 愈々濁 口
欲養 愈々瘠 交
辯:弁 不見喜 争
直立 不見知 勝
廉 不見貴 傷
勇 不見憚 貪
信 不見敬 好専行