わかりやすい論語13 己の欲せざる所、人に施すことなかれ

はじめに
 この言葉は、私にとって論語との出会いでした。中学校か高校の国語の教科書に、この言葉がのせられていたのです。ただ、本編としてでなく、紹介程度のものでした。このことについて教えてもらえるのかと、わくわくしていたら、「難しいから紹介だけ」と何も教えてもらえず、大変がっかりしたことを今でも憶えています。そして、田舎者で世間知らずな私は、それ以来、そんな難しい本が、簡単に手に入るはずはないと思いこんでしまったのです。大学生協の本コーナーでたまたま論語の本を見つけるまで、探してみようと思ったこともありませんでした。ですが、そのとき大学の生協で見つけた「論語新釈」(講談社学術文庫)は、今でも大事に読んでいます。このわかりやすい論語も、この「論語新釈」をもとにして書かれています。


子貢問うて曰く、「一言にして終身之を行うべき者あるか。」子曰く、「それ恕か。己の欲せざる所、人に施すことなかれ。」

(衛霊公第十五より)


現代語訳
子貢が質問して言うには、「死ぬまで行うべきような、ひとつの言葉はありますか。」孔子が答えて言うには、「それは恕だ。自分がしてほしくないことを、人にしてはならない。」


解説
 「己の欲せざる所、人に施すことなかれ」は、論語の言葉の中でも有名だと思います。正直なところ、特に解説することはありません。「自分がしてほしくないことを、人にしてはならない」誰でも分かる簡単なことです。自分がしてほしくないようなことは、誰にとってもしてほしくないことなのです。そんなことをすることが良いことであるはずがありません。この言葉の意味自体は、このようにとても簡単なのです。ですが、行うことは一生かかってもできるかどうかという難しいことです。

 例えば、自分の命を奪われるようなことは、ほとんどの人が「自分にはして欲しくない」と思うでしょう。頭ごなしにばかにされるようなことは、ほとんどの人が「自分にはして欲しくない」と思うでしょう。信頼を裏切られるようなことは、ほとんどの人が「自分にはして欲しくない」と思うでしょう。こういったことは、「自分にして欲しくないこと」の中でも、人にしないのが簡単なことです。そもそも、こうゆう大それたことをする人は、あまり居ません。今、論語に興味を持っているあなたは、しないように心がけていると思います。

 ですが、乱暴な言葉で話すことや、機嫌が悪い時に八つ当たりしてしまうようなことや、借りた物を返さないことや、約束の時間にわずか5分でも遅れることのような、些細な「自分にはして欲しくないこと」もあるのです。これらの些細な「自分にはして欲しくないこと」を全て人にしないことができる人がこの世の中にいるでしょうか。ほとんど居ないと思います。この言葉を全て実行することは、死ぬまでかけてもできるかどうかの難しいことなのです。とは言え、難しいからと言って、自分にはできないというわけではありません。少しずつ、少しずつ、「自分がしてほしくないことを、人にしないようにしていくこと」が大事なのだと思います。

ツイッターのアカウントがある方はフォローお願いします。
"twitter 漢籍名言"

おまけ 英訳
Shikou asked,"What is one word which have to practice for all my life?"
Confucious answered,"It is JO.Never do people,that he dose not want to see for yourself."

大学 現代語訳

大学 現代語訳


分かりやすい論語まとめ
http://d.hatena.ne.jp/keigossa/20120207/1328611563