183.荀子 現代語訳 賦第二十六 一・ニ章

一章

 ここに大物があります。
 生糸でもなく 絹糸でもなく その綾模様 規則正しく美しく
 日にあらず 月にあらず その明るさは 天下を照らす
 生きる者は 幸福に生かされ 死んだ者は 安らかに葬られ
 城の壁は固く 三軍は強く
 純粋に保てば王者となり 混じりて保てば覇者となり 一もなければ則ち亡ぶ
 私め 愚かで これが何か分かりませぬ
 敢えて問います 王よ これは一体 何ですか

 王は答えた。
 これこそは かの綾模様あり いろどりなきもの
 簡約至約 知りやすく 理(ことわり)あること これ以上なし
 人の性 これを得ざれば 鳥獣ともなり
 人の性 これを得れば 極めて雅か
 道端の人 これを尊べば 聖人となり
 諸侯 これを尊べば 四海の内すら 一つともなる
 極めて明らかで それでも簡約 善に和して 体得すべし
 これは礼としようではないか

 ーーー 礼 ーーー

二章

 天がものを作り そうして下民は これを見た 
 あるいは厚く あるいは薄く いつ見ても 平らでもなく 均しくもなく
 桀王紂王は乱れ 湯王武王は賢(さか)しく
 見えぬようで静かでも はっきり見えてきらびやかで
 四海の内を 駆け巡らない日はなく
 君子は これによって修まり 盗人は 自室を突き上げられる
 その大なることは 天にも同じく 精密緻密 しかも形なく
 義は行われて正しく 事業も成就す
 暴は禁じられ 貧窮は満ち足り
 民百姓 これがありて 久しく安寧
 私め 愚かでこれが何かは分かりませぬ
 これは一体何なのか 教えていただけはしませぬか

 答えて
 これこそは かの広く平らかに 安んじて 狭く険しいことを 危ぶむものか
 すらりとした 廉潔のことに 親しんで 薄汚い 雑駁のことを 疎んじるものか
 内奥深く しまわれて 外敵に遭いて 勝つものか
 禹王と舜王 これを法とし その道筋を 覆うものか
 行い為すこと 動くも静かも これがありてこそ 的中するものか
 血気は精強 志は栄え 
 民百姓 これがありて 久しく安寧 下天下 これがありて 久しく平らか
 明達純粋 その瑕疵はなし
 これこそは 君子の知と 言うものだ

 ーーー 知 ーーー


まとめ
http://d.hatena.ne.jp/keigossa/20130104/1357283885


解説及び感想

■この賦篇は、特に、詩的な要素があるので、訳もがんばって詩風にしてみた。適切であるかは分からない。

■賦とは、天子や王に対して、庶民平民が納めるもののことで、現在で言うと税金のことである。しかし、現在の税と違う部分は、労役もあったことである。当時の中国では、土木工事も、徴兵制のようなやり方で行われていた。つまり、軍事の延長にあったのである。だから、将軍は土木監督もしていた。有名なのは、秦の始皇帝の将軍蒙恬が行った万里の長城建設と言えよう。▼また、当時は封建制度だったから、諸侯が王に納めるものも賦であった。今で言うと、日本が国連に納めるお金のようなものに当たる。