会社法入門を読んで

会社法入門 (岩波新書)

会社法入門 (岩波新書)

会社法について網羅的にわりと詳しく書かれていたと思う。

もっとも、会社法の全体像をわかっていないので、恐らくそうだろうということではあるが…

内容としては、
1.会社法の沿線と概要
2.会社法に規定される組織のガバナンスについて(主に強行規定のことで株式総会などのことも含む)
3.株式について
4.合併などの組織再編について
5.まとめ的なこと

ということになると思う。

読んでいて思ったのは、ガバナンス・governanceについては、組織の運営に関する機関の設置という意味でも、かなり歴史的に発達したんだなぁということが分かる。というのも、少し前に社外取締役(この本の出る6年前のもの)を読んだからである。この社外取締役に書かれていたようなことが、現在、制度として取り入れられたんだなぁと感じられた。

株式のシステムについては、とても難しいなぁと思った。というのも、株式会社の資産は、社債、株式、企業価値、純資産、銀行借入などといった概念によって認知するのであって、さらにこういった複雑なものが、さらに複雑にからみ合っているからである。株式会社同志の合併など、特に資産の増減が分かりにくい。そうすると、誰が誰に借金して、結局、誰がどんなふうに現金を手にするのかほとんど分からない。

この他にもややこしいとしか思えない制度がたくさんあって、それが会社法にも事実書かれているとのことである。これに、「会社法は、ジグソーパズル」という風評を加えれば、わざと複雑に書いたとしか思えない部分もある。

複雑にすることに何らかの策謀的な意志があったかもしれないということは、昨今の状況からすると、全く否定出来ない部分もある。また、この著者曰く、「現在の日本語では、蓄積された判例を単純に表現することはできない」とのことである。さらに、「数学で平方根を√だけで表すように、言語にも何か革命が起きないか、また、革命が起きれば単純に表現できるかもしれない」みたいなことを最後に述べている。その言語を進化させるという発想はすばらしいとは思う。

しかし、これほど複雑だと、会社法の勉強をしないで、株に手を出せば、そら自滅するに決まっている、とも思った。金融業をやっている側からすれば、会社法が分からない投機家や投資家や株主や経営者はカモでしかないだろう。ただ、事実として、IT化と株式会社制度の発展により、法文も複雑にするより他、仕方がないところもあったとは思う。

まとめとして、著者は、IT化とグローバル化によって、株式会社制度はこれからどんどん変わっていくだろうし、株式会社の制度が無くなることはないであろう。と結んでいる。もう7年ほど前の本ということになるから、現在どうなっているのか、会社法の新しい本を読んでみたいと思った。