シリア・この問題は安易なものではない

日本の立場からすれば、確かに、シリア問題は、さほど急務ではない。深刻度もさほどない。

それは、日本のエネルーギー源が、シリア側を通って来ていないからである。

逆に、こういった問題が、イラクやイランで起きていたら、石油価格がすごい不安定になるだろう。

そのように、ヨーロッパでは、石油に関する不安が起きていると思われる。なぜなら、シリアは地中海に面しており、エジプト・スエズ運河経由で石油を調達していると思われるイギリス以外のヨーロッパ諸国は、相当に影響を受けることが予測されるからである。

しかも、この内乱はかなり続いていて、既に半年以上、一年近く経過していると思う。

根も葉もないかもしれない、また根拠にも乏しいような、化学兵器使用を理由にしてのアメリカの軍事介入決定は、実はこういったヨーロッパ諸国の石油価格不安が最も大きな背景である。と見るのが正常な国際感覚ではないかと思う。

ということは、アメリカ追従以前に、ヨーロッパ諸国とよろしくやっていきたいのなら、日本は、当然にすぐに協力しなければならないわけである。

ただし、これはあくまで、外交政治的な判断であって、道義的な判断ではない。

そこで、外交政治的な判断と道義的な判断をいかに両立するかが、政治なのであり、そこの折衷案を妥当にしてこそ、本当の最も妥当な判断と言うことができるだろう。

だから、私としては、最初の時点では「アメリカは軍事介入しない」と公言しつつも、現時点で外交政治的に抑えることが困難になってきたから、「化学兵器を使用した」という道義的な理由を持ちだして、内心は渋々軍事介入を決断したオバマ氏(若しくは米当局)は政治的に妥当と言うことができると思う。

ちなみに、ロシアとしてみれば、シリア内乱が続けば、自国から産出される価格の安定した天然ガスをヨーロッパ諸国に少し高く売りつけることができるという意味で利益がある。中国に至っては、こういった経済における利害関係は、日本同様ほとんどない。

もちろん、政治体制の理由でも、ロシアと中国は、シリア政府に対して肯定的な立場を示しているのだろうとは思うが、結局のところ、この二国は、道義的な考えに基づいた主張を一度もしていないわけである。要は、得する方に動いているだけである。

しかし、アメリカとて、シリアに軍事介入しなかったのは、国費を消耗したくなかっただけだし、今回介入したのも前に述べたように何らか経済的なことが絡んでいることは間違いないのだから、そういった意味で、得する方に動いているだけである。

結局、私が言いたいのは、これは、個人的な意見である「好き嫌い」だけでは決するこのとのできない問題であり、安易なものでないということである。

また、好き嫌いで決せないという観点では、シリアの人の未来もかかっているのであり、私としては、どこが介入しようが反対しようがどうでもいいのであって、結果として最も多くの人にとって最も不利益の少ない形で、内乱が収束することを望むし、できれば、自由を享受して、経済的にも困窮しない場所が増えればなぁとは思う。