新富裕層について

今日、八重の桜を見たあと、新富裕層と国家という番組がやっていたので見た。

一言で言うと、彼ら(国家を捨てる新富裕層)は狂っている。

番組の内容を簡単にまとめると、

時代の流れ(主にアメリカが作り出したものらしい、つまり、レーガンやブッシュによる規制緩和と減税政策という金融構造の変化、及び、産業構造の変化でIT分野が突出してきたこと)によって生まれた資産百万ドル以上の人たちである新富裕層が、税金の高い国家を捨てて、税金の低い国家に移住している。

そして、彼らが国家を捨てれば、当然のように彼らが元居た国家の税収は減り、国家の税収が減れば、国家による保護が手薄になるから、もともと貧しい人の生活は苦しくなる。

また、税金の低い国(シンガポールプエルトリコが取り上げられていた)にも、問題がないわけでなく、税収は増えるが、富裕層が馬鹿みたいに投資をするから、地下が上がったり、物価が上がったりして庶民の生活にひずみを生じるとのことである。もちろん、国家としての収入はゼロからプラスにわけで、そこからなんとかしようと考えるのが、これらの国家の本来の計算ではある。だが、政策が現実に追いつかないというのが実情であろう。

これが、番組の内容を簡単にまとめたものになる。

NHKも人選がうまくて、国家を捨てた新富裕層で張り付いて取材をした人が、投機家であった。

まず、投資家と投機家は違う。投資家とは、育ちそうな企業や、育てたい人にお金を貸すことにより、そういった企業や人を育て、そうして利益を得ようとする人たちであり、フンコロガシならぬ金ころがしであることには変わりないけれど、まだ好感が持てる。これに対して投機家とは、簡単に言えば相場屋のことであり、純然たる金ころがしのことで、やっていることはギャンブルでしかない。

だから、私に言わせると、(私もパチンコに行くのだが、というかだからこそ言えるのだが)、彼らのやっていることは、決して「仕事」ではない。それなのに、彼ら投機家は、自分のやっていることを「ビジネス」と言ったり、「大きい事業」と言ったり、「仕事」と言ったりするのである。この時点で、こいつら少し頭おかしいな。と思うのであるが、

この上でさらに、「俺が一生懸命働いて、俺はこんなに一生懸命働いているのに、その金の大部分が税金で取られて、働いていない奴に使われるのは納得いかない」と言うのである。

私に言わせてもらえば、これは、まあ、どんぐりがどんぐりを批判するようなもので、さらに詳しく例えるなら、崖っぷちで川に落ちなかったどんぐりが、運悪く川に落ちてしまったどんぐりを、「お前は落ちたが、おれは落ちていていない。なんでお前を助けないとならないのか」と言ってるようなものである。さっきまでは、一緒にがけを転がり落ちていたのに、自分の運が少し良かったからと言って、そのようなことを言うのなら、どんぐりの背比べにも劣るどんぐりの運比べでもしているのだろう。

まあ、そんなわけで、きっと彼らは、頭がオカシイのだと思う。

私が金持ちであったら、この私の批判も説得力が増すのだろうけど、残念ながら、私は貧乏で、間違いなく川に落ちてしまった方のどんぐりであるから、多くの人にはひがみややっかみに思われるかもしれない。しかし、荀子には、「志意修まれば富貴にも驕り、道義重ければ王公も軽しとす」とあり、これは大実業家であった渋沢栄一が特に好きな言葉でもあったわけであるから、そういったことで了承していただきたい。

今、荀子についての引用があったので、さらに荀子から引用すると、確かこういったことであったと思う。

礼論より「そもそも天地の間に生じた者で、血気のある種族であるなら必ず知があり、知のある種族ならばその同類を愛さないということはない。今、かの大きな鳥や獣たちは、自分の群れから離れてしまって、一月経ち季節が過ぎるのならば必ず前いた場所に戻ってみて、故郷を通過することがあるのなら必ずそこで巡回し鳴きしきり、行ったり来たり未練がましくして、そうしてからやっとその場所から離れることができる。小さいものでは、燕や雀でさえも、哀しい鳴き声をあげてからそこを去ることができる。 」

ということであるのに、彼ら新富裕層なる人々は、自分の国家を捨ててしまうわけである。

ましてや、自分たちがのうのうと「大きな事業」ができるのは、我々庶民がいるからであり、さらに、それを国家が安全やシステムの面において保証しているからなのに、という話である。

これは少し思いを致すことができれば分かる話で、例えば、駄菓子屋のおばちゃんがたとえ小さな子どもにでも「ありがとね」とお礼を言うことと本質的には何も変わらないことである。

しかし、彼ら新富裕層なる人々は、自分の富には聡いけれど、それ以外のことには疎いようで、こういったことを考えることができないらしい。そして、自分の能力のみによって、自分に富が集まっていると考えているようである。試しに、日本政府の機能を全て停止して、アメリカの貧困層の人を全員一気に月にでも移住させてみようか、さあ、彼らの「富」がどうなるか、楽しみで仕方がないという話である。

ただし、このように新富裕層の人を責めたのではあるのだけど、彼らも少し自分が成功してそれに酔いしれているだけだと思う。成功すれば調子に乗ってしまうことは、人間のサガであり、私だって簡単に富をなしてしまえば、彼らと同じ境遇になるかもしれない。だから、私としては、彼らが目を覚ましてくれることを祈るばかりである。

ところで、現代は民主主義であることも、実感できる番組内容になっていた。最後のあたりで、貧民のデモや不満を明らかにしたあと、オバマ大統領が、富裕層の税金を高くすることを宣言している場面と、日本の税制調査会でも、富裕層への増税の流れで意見は一致していると報告する場面が映しだされたのだった。

NHKのその番組のページ
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/0818/