82.荀子 現代語訳 富国第十 四章

四章

 天下を兼ねて満足させるためには、分を明らかにしなければならない。(天下を兼ね足らしむるの道は分を明らかにするに在り)

 土地は測量して畝でそれが分かるようにし、草刈りをして穀物を増やし、肥をやって田畑の手入れをすることは、農夫や庶民の仕事である。適切な時期を守って民衆を励まし、事業を進めて功績が出るようにし、百姓を和気あいあいとさせて怠けさせないようにするのは、将率の仕事である。高い土地でも干ばつにならず低い土地でも水害が無く、寒暑も度が過ぎたものとならずに五穀を季節に従って実らせるのは、天の仕事である。

 かの、兼ねてこれを覆い、兼ねてこれを愛し、兼ねてこれを制し、不足の不作や干ばつや水害があっても、百姓に凍えて飢えるような心配をさせないようなことは、聖人、君主、賢者、宰相の仕事である。


まとめ
http://d.hatena.ne.jp/keigossa/20130104/1357283885


解説及び感想

■今まで、役割分担とか、序列とか訳してきたけれど、それは「分」という文字の事である。学問のすすめでは、分限という言葉があって、これが自分の範囲を自分で決定するような意味で使われていたのだけど、ここが、民主主義と当時の王政との大きな違いであると言えよう。現在の民主主義や市場主義では、この「分」が自分によって決められるのであり、逆の言い方をすれば、誰も自分の分を与えてくれないし教えてくれないから、それを自分で勉強して決めなければならないのである。だから、民主主義には高等な教育が必要なのかもしれない。