74.荀子 現代語訳 王制第九 十五章-後

 火に関する法律を定め(昔は火をつけて獣を追いたてたりしていた-韓非子の信賞尽能か、必罰明威のところに孔子の出てくる話がある)、山林や藪の草木・魚類・山菜などを養い、収獲の禁止時期を決め、国家に日常品が足りるようにして財物が尽きないようにするのは、虞師の仕事である。

 村落を定めて住宅を治めて、家畜を育てさせ園芸を習わせて、教化を勧め親孝行や長者に仕えることを促して適切な時期に治め整え、百姓を農業に専念させて安心させるのは、郷師の仕事である。

 職人の技術を研究して、季節にあった仕事を明らかにし、その日用品が良いか悪いかを検査して判別し、丈夫であることと便利で使いやすいことを旨とし、工芸品を許可なしに作る人がいないようにするのは、工師の仕事である。

 陰陽を見て前兆を見て占いをして、亀を焼いて卦を連ね、お祓いや吉日や吉方向を選んで五つの占いを司り、その吉凶妖祥を知るのは、傴巫・跛撃の仕事である。

 便所などの清潔を保って、道路の修繕をして、盗賊を戒めて、割符を公平に出して、適切な時期に治め整え、旅人や外国の客人が安心できるようにして、財貨が通じやすくするのは、治市の仕事である。

 正直で素直な人を選んで、強暴なことを禁じ、淫乱なことを防いで、邪悪を除き、これを罰するのに五刑を用い、強暴な者を改心させ、悪事や邪悪なことが起こらないようにするのは、司寇の仕事である。

 憲法を基本として法律を正し、多くの事を公平に聞いて時期についても合わせて考え、功績に応じた報償が適切な時期に与えられるように議論をして治め整え、役人が勤勉となるように仕向けて、庶民が怠け者にならないようにするのは、冢宰の仕事である。

 礼と楽を論じて普段の行いを正し、教化が行き届くようにして、広く兼ね治めて調和と統一があるようにするのは、辟公の仕事である。

 道徳を全うして、礼と義を致し、文明と文化を兼ね備えて、天下を一つにして細い毛ですら漏らさないようにし、天下に心服しない者がないようにするのは、天王の仕事である。

 だから、政治が乱れるのは冢宰の罪であり、国家の風俗が悪くなるのなら辟公の過ちであり、天下が一つにならず諸侯が離反するようならば天王がそれに相応しい人物ではないということなのである。


まとめ
http://d.hatena.ne.jp/keigossa/20130104/1357283885


解説及び感想

■現代と昔とでは、政治の役割も随分変わっているのであろうけど、私が疑問に思うのは、この最後のあたりの特に道徳に関するような役割の人がかなり前の時代から居ないことである。まあ、居たのかもしれないけど、現代には間違いなく居ない。敢えてそれを割り当てるなら、メディアがそれになるのだろうけど、皆さんもご存じの通り、メディアは、礼を廃れさせて、淫乱を促し、道徳を蹴落として、不和をもたらす。それは言い過ぎとしても、プラトンが国家だったか法律だったかで指摘している通りに、民衆が好きなものを選ぶ民主主義制度や、市場主義では、絶対にくだらないことや、詐欺的なことが幅を利かすこととなるのだ。こういった道徳や風俗に関しての研究を行う機関や、それを適切に定めることのできる機関や制度が現代でも必要なのではないか。