絵本原作1 くらやみ君

前から温めていた絵本になるといいんじゃないかという原作

誰か絵をつけてくれんかなぁ

場面1
いす君「あ〜、今日もあのでっかいおじさんがぼくの上に座るのか〜、いやだな〜、ぼくはオシャレな椅子だから、オシャレなお姉さんに座ってもらいたいんだ」

場面2
くらやみ君「いす君、どうしたんだい? なんでそんなに元気がないんだい?」
いす君「ぼくは、あのでっかいおじさんに座られたくないんだ。でも、今日ももうすぐあのでっかいおじさんがくるんだよ」

場面3
いす君「あ、そうだ!くらやみ君!きみ、大きくなって、あのでっかいおじさんをおどかしてくれないかな?」
くらやみ君「人をおどかすのはよくないよ、ぼくの家にはそれだけはしないようにっていう言い伝えがあるんだ」

場面4
いす君「いいじゃないか、ちょっとだけだから」
くらやみ君「君がそこまで言うなら仕方ない、ちょっとだけだよ」

場面5
くらやみ君が大きくなって待ち構えている部屋のドアをでっかいおじさんが開けた
でっかいおじさん「ワーッ!」

場面6
でっかいおじさんはあわてて逃げて行ってしまいました。
いす君「きみ!すごいね!ありがとう!」
くらやみ君「うまく行ったね」
くらやみ君は人をおどかして少し愉快な気持ちになっていました。

場面7
くらやみ君は考えました。
「ぼくってホントはすごいんじゃないかな。こうやって大きくなるだけで、人をあんなにおどかすことができるなんて、もっと大きくなってみようかな、そしたら、もっとたくさんの人をおどかすことができるんじゃないかな」

場面8
くらやみ君は目いっぱい大きくなりました。
くらやみ君が大きくなると、太陽も、電気も、そしてたき火の明かりさえもまっくらなやみに包まれました。

場面9
もう、町じゅう大パニックになりました。
くらやみ君「ハハハッ!愉快!愉快!みんなおどろいてあんなに走りまってらー」

場面10
いす君はくらやみ君に言いました。
いす君「くらやみ君、もうやめて欲しいんだ。これじゃ、きれいなおねいさんもぼくに座ってくれないよ」
くらやみ君「君が頼んだんじゃないか、それに、こんな楽しいことやめないにきまってるじゃないかっ!」

場面11
くらやみ君はとても愉快な気持ちになりました。いつもはものかげに隠れて目立たないでいたからです。それに自分に見向きしてくれる人なんてほとんどいなかったのです。くらやみ君は大きくなったまま、今度は自分より人をおどかすことが上手なものはいないか探し始めました。

場面12
くらやみ君「ライオンさん、君は人をおどかすことができるだろうけど、ぼくよりおどかすことができるかい?」
ライオンさん「できないよ、できないよ、君にはかなわないよ」

場面13
くらやみ君「あくまくん、君は人をおどかすことができるだろうけど、ぼくよりおどかすことができるかい?」
あくまくん「できると言いたいけど、できないね。ぼくの場合、ぼくを見える人とそうでない人がいるから、君みたいにみんなをおどかすことはできない」

場面14
くらやみ君「神様、神様、ぼくより人をおどかすことが上手なものっているのかな?きっといないと思うけどね」

場面15
神様「ずーっとあっちへ行ってみなさい」

場面16
くらやみ君「神様もくやしまぎれにあんなこと言うなんて。まあいいや、おどかすのにも飽きてきたし、あっちに行ってみよう」

場面17
くらやみ君が神様の言った方向に向かっていると、とても大きな工場のようなところに着きました。
くらやみ君「神様が言っていたのはここのことだな、よし、ここにいる奴らをおどかしてやろう」

場面18
そこにいたのは、ばくだん君たちでした。
ばくだん君「君は何をやっているんだい?」
くらやみ君「ぼくは今、ぼくより人をおどかすのが上手なものを探しているんだ。君は知らないかい?」

場面19
ばくだん君「それならおれのことだ。おれはここにいるだけで、すごい大勢の人をおどしているんだ」
くらやみ君「へー、ぼくよりもかい?」
ばくだん君「もちろんだとも」

場面20
これを聞いた他のばくだん君が言いました。
他のばくだん君「そいつなんかより、おれの方が人をおどしているぜ」
ばくだん君「フンッ!おれの方がおどしているに決まっているだろ」

場面21
これを聞いた他の大勢のばくだん君は、みんな「おれだ!」「おれだ!」と叫び始めました。その声は、全部、くらやみ君が嫌になってしまうような大きながなり声でした。

場面22
くらやみ君は愉快だった気持ちが一気になくなってしまいました。
くらやみ君「なんだい、人をおどかすことなんてやっぱり面白くともなんともないことじゃないか」

場面23
くらやみ君は、大きくなるのをやめて、自分がもといた場所に帰ることにしました。今日もみんなくらやみ君がいるところで、すやすやと次の朝日を待つのでした。

終わり