今回の解散時期

今回の解散時期は、どう考えても民主党にとって不利であった。だから、私としても意味が分からなかった。

そしてその「不利な解散」は、あろうことか、最も不利を受けるはずの民主党党首である野田氏から発せられたわけである。

なぜ、最も不利になると一番分かっている人間が、敢えて自分が不利になるような「選択」をしたのか。

これは相当な謎だと思う。確かに、一度解散すると言ったのに解散しなかったために、うそつき呼ばわりされていたことはあるだろうけど、そのくらいのことに耐えるのはそんな難しいことではなかったろう。既にあの時点で三か月も耐えていたのだから。

私は、前前回の民主党総裁選のとき、世界の流れを読まなかったために、小沢氏が勝つと思って予想を外したのだけど、今回はどうなのだろう。

まず、アメリカ大統領選があった。ここでは、「軍縮派」のオバマ氏が接戦を制して勝つこととなった。この時点で、アメリカの国益としては「日本が軍拡する方」にあることになる。つまり、日本が防衛権を拡大して、中国ににらみを利かせ、そうすることによって、アメリカ海軍の助けとなることが望まれるわけである。まあ、これはロムニー氏が勝っていても同じことなのだけど、もし、ロムニー氏が勝っていたら、「軍拡」して、日本の安全はほとんど脅かされないかもしれない。しかし、オバマ氏が「軍縮・撤退」の方向で動く限り、日本の安全保障問題は、脅かされる方向に進み続けるということになる。

これも偶然であろうが、このアメリカ大統領選とほぼ同じ日に、中国共産党習近平氏が新たな国家主席となり、「中華帝国」継続が約束されていた。

また、折しも、このころ北朝鮮がミサイルを発射する準備にとりかかっていた。この解散宣言をしたとき、「ミサイル発射の動きがある」程度の事は、間違いなく野田首相の耳に入っていただろう。そして、その「ミサイルの発射」が、世論をさらに右傾化することくらいは簡単に予測できたであろう。これに関しては、韓国の衛星打ち上げが関係しているという話もある。そういったことなら、なおさら、この時期にミサイル打ち上げがあるであろうことは、外務省筋から緊急案件としての打診があっただろう。

このように考えてきてみて、野田首相は、このことを誰よりも理解していたのではないかと思う。つまり「日本が防衛権を拡大することは、国益にかなっているどころか、最重要案件であり、一刻も早くそれをしなければならないということ。」そして、「この時期に選挙をすれば、日本は間違いなく防衛権拡大の方向(政局としては民主党惨敗)に動くであろうということ。」

野田氏は論語や中庸などをよく読むということらしいが、野田氏が君子ならば、この選択が日本にとってベストであったということなのだろう。確か、解散のとき、野田氏はこう言っていた。「こんな多くの人のくびを切るのは初めてで、非常につらい」君子の胸中は、簡単には察せないということかもしれない。