いろいろな人の悪いうわさは疑うべき、「敵国廃置」について

 韓非子の内儲税六微という篇に、この「敵国廃置」がある。

 まあ、韓非子を読んでもらうとわかるのだけど、一応、私のほうでもなるたけわかりやすく説明したいと思う。

 会社Aと会社Bがあったとする、この二つの会社は、とても仲が悪く、商売的にもお互いにライバル関係だったとする。そのとき、A社には佐藤さんという人がいて、この佐藤さんがとても賢く、もし、佐藤さんが経営に携わるようになれば、間違いなくこのA社は繁栄が約束されるという状況だったとする。このとき、当然、B社としては、佐藤さんが邪魔になるわけである。なぜなら、佐藤さんが経営に携われば、B社のシェアが奪われることは間違いないからである。

 それで、慌てふためきだしたB社の社長は、いたるところで佐藤さんの悪いうわさを流し始めた。もちろんそれは讒言(でっちあげの悪口)で、佐藤さんが働き盛りの男性である以上、たまに飲みに行ったりしていたのを、このように言っていたのだ「この前、A社の佐藤に飲み屋で会ったんだ。A社の佐藤は、女好きの酒好きだ。昼休みも酒を飲んでいるらしい。酔っぱらって自分でもそう言っていた。」

 佐藤さんが彼と会ったことは事実であったけど、もちろん、賢い佐藤さんは昼間っから酒を飲むような人物でもないし、他の人と比べてことさらに女好きの酒好きではなかった。ただ、飲み屋には一月に一回行くことはあったし、付き合いで女性のいるお店にも行くこともあった。だから、そのことは半分事実で半分嘘の言葉だった。

 この噂をきいたA社の社員は、面白がって、また、普段厳しい佐藤さんを憎んで、また、自分の出世の邪魔になっている佐藤さんを陥れようとして、至る所でこの噂を話し始めた。

 当然、佐藤さんにこの噂を直接確かめる人はいなかった。そんなうわさが広まっている最中、佐藤さんが仕事で失敗をしてしまった。そこそこ大きい失敗だった。しかし、賢い佐藤さんのすごいところは、失敗を必ず転じて成功させることだった。だが、タイミングが悪かった。この嘘の噂が広まっているときに失敗してしまったのだ。佐藤さんは、弁解の余地もなく、皆から憎まれ疎んぜられることになり、信じていたはずの部下たちも、彼に協力しなくなってしまった。当然、佐藤さんは、この失敗を成功に転ずることはできなかった。そして、佐藤さんは会社を去ることになってしまった。

 こういった場合、一番損をこいているのは誰か?言うまでもない。佐藤さんの賢さの恩恵を受けるはずだったのに、彼の悪い噂を信じて広めたA社の社員たちなのである。そして、一番得をするのは誰か?そうB社の人間である。

 悪口を言われ悪いうわさを流されている日本の政治家たちの存在、そして、噂を流しているのが各国の工作員、その噂を面白がったり自分の利害から広めている人、もうここまで言えばわかっていただけると思う。

 人の悪いうわさは、直接事実確認するか、状況証拠の確たるものを最低でも3つ以上集めない限り、信じてはならないし、言ってもならない。噂は複数方向から流れてくるから信憑性が高くなるような印象を受けるが、実際は逆である。色んな方向から流れてくる噂ほど、嘘の讒言である可能性も高い。なぜなら、それが噂となるように、いろいろな方向から流してあるからだ。

 善いことの方は、嘘かも知れなくても信じてい良い。だが、悪いことの方は、かなり慎重に扱わなければならない。それが近しい人であればあるほど、その噂による損害は自分に来ると言っても過言ではない。

 これは何も、政治や国政に限ったことでない、悪いうわさが流れている時、しかも、それが本人に確認されることなく、いろいろなところから発生している場合、誰かが「●●さんが〜〜〜〜と言っていた」と言う形で噂が流されている場合、こういった場合は、会社のみならず学校ですらある時がある。とにかく、噂というものは簡単に信じないに越したことはない。