孟子を読んでいて1

 最近、孟子を読み始めた。読んでいて普通に面白いなぁと思った。

 孟子を前に読んだのは、もうかれこれ5年以上も前になるけど、読むのが早くなっていた。というのも、以前は、書き下し文を読み、語句の解説を読み、訳文を読んでから、さらにまた書き下し文を読むことでやっと意味が分かっていたのに対して、現在は、ほとんど書き下し文を読むだけで意味がわかるからだ。自分の習熟度や理解能力が上がっていると感じれたことはとてもよかった。

 今、読んでいるのは、孟子が、斉の恵王に、いろいろな説教をする場面だ。

 孟子のすごいところは、比喩の使い方と言えるだろう。これだけの含蓄に富んだ比喩を即席で作っていたのかと思うと、その賢さが垣間見れる。孟子の比喩で有名なのは、五十歩百歩だ。これは、戦争の好きな恵王に、彼自身が王道を行わないことと、他の国も同様に王道を行っていないことをさとし、恵王に、王道と仁政の実践を勧めるために作られた比喩である。このように、孟子は比喩に優れている、孟子を何度も読めば、比喩の作り方に熟達することができるだろう。

 次に、孟子のすごいところは、恵王を全く手玉に取っているところだ。そのやり方が、論語にあるように「これを諌争せよ、而してこれを犯せ」(諌めるときは、争うようにし、相手が嫌な顔をするくらいにせよ)というのに適っている。これは、孔子子路に言った言葉で、気の強い子路ですらそれを意識してしなければできなかったと思われるのである。孟子はこれをするどころか、時には、恵王を褒めるようなことを言ったりしている。このように、孟子は説得術にたけていたと思われる、それを実現するにあたって、徳によってしか体現できない雰囲気はあったと思う。しかし、孟子を読むことによって説得術に熟達することができるだろう。

 また、恵王には、左右の重臣韓非子に言うところのもの、家臣であるのに権力者であるもののこと)がいなかったと思われる。これは、彼が、勇を好むなどと自分でも言っていることからわかる。気に入らないと思ったらすぐにくびにするようなことをしていたのだろうと思われる。重臣がいないから、この国ならと思い、孟子はそこにいたのではないかと思う。また、そういった苛烈な性格であると思われる恵王も、なんか可愛いところがある。まあ、孟子の前だとそうなってしまっていたということかもしれない。

 最後に、孟子を読んで、一番分かることは、春秋戦国時代という時代の理不尽さというようなものだ。今の社会と比べると雲泥の差である。今の地球上で最も治安の悪いところと、この時代を比べてみても、断然、春秋戦国時代の方が劣悪な環境であっただろうと思われる。