富について

 一般的に富と言われるものには、フロー(流動的なもの)とストック(蓄積されたもの)があるのだと分かった。

 例えば、金とか銀とかの貴金属、さらには、お金という貨幣などは、富のうちでフローでしかない。これは、けっこう衝撃的なもの言いかもしれない。しかし、私の富の概念によると、それらは流動するだけの一過性のものであり、蓄えることのできる真の富ではない。なぜなら、それらは何も生み出さないし、流通の手段という貨幣以外としては、それらが人間の役に立つことはないからである。

 では真の富とは何か。真の富とは蓄積された人間の知恵であるのだ。少し具体的にすると、真の富とは、その知恵によって作られた動力装置や、その知恵によって生産されるであろうものであり、その知恵によって作られた組織のシステムやその組織そのものであるのだ。

 真の富である知恵:知の恵みがあれば、最初に挙げたフローの富を引き寄せることはたやすいのだ。逆に言うと、どれだけフローの富みがあったところで、ストックの富が無かったら、それらは飛散してなくなってしまうばかりである。

 順番としては逆になってしまったが、私の定義する富とは、人間の生活を豊かにするもののことである。最も人間の生活を豊かにするものは慈悲や慈愛にほかならぬであろうが、これこそほんとに知恵でしかない。だが、その部分(精神的な富)をなしにして、富を物質的なものだけとしてみても、やはり、真の富とは人間の知恵なのである。