丸山真男の思想史学を読んで

丸山真男の思想史学 (歴史文化ライブラリー)

丸山真男の思想史学 (歴史文化ライブラリー)

丸山真男はよく名前を聞くので、読んでみた。

本当は、本人の著作を読みたかったのだけど、不幸にして図書館に蔵書が無いため、やむを得ずこれを借りて読んでみた。

ほぼ予想通りのことだけど、「思想」という抽象的で、著述が難解なものをさらにまとめた本であるので、当然のようにあまり意味が分からなかった。

ただ、丸山の思想体系をうまくまとめようとしている姿勢は見えるし、各著作のハイライトをうまく抜粋してあることは間違いないので、丸山真男の著作をいくつも読んだことがある方なら、興味深く読めると思う。


上述したようにダイジェスト的なものなので、あまり意味が分からなかったのだけど、その上で、

丸山が元は儒学の研究をしていたこと、福沢諭吉にも傾倒していたことが興味深かった。

超国家主義大衆社会の分析は、当てはまると思われる部分も多く、詳しく読んでみたいと思った。また、ここには、第二次大戦時に30代で、戦前戦後を生きた人ならではのリアリティがあり、この点でも非常に興味深い。

また、儒学の研究をしていたこともあってか、あるいは、これがこの世の真理なのか、中核となるような理論体系の根底には、陰陽思想がかいま見えた。といっても、これは、ヘーゲル弁証法などの正反合と同じものなので、マルクスの影響と言う人もいるだろう。

この本においては、そういった古典との関係での解析はあまり行われていないように思う。

というか、人の類型からして、政治思想とかが好きな人は、古典や宗教に興味を示さない傾向が強く、逆に、古典や宗教が好きな人は政治思想に興味を示さない傾向が強い。

というのも、政治思想というのは、一種の類型化で、思想を型に押し込むようなものであり、普遍性でなくて特殊性が主な解析対象となっていることがあろうだろう。宗教や古典は、全てのものに共通する普遍性を見出すむしろ一般化である。

こういった考え方こそ陰陽思想的な考え方なのだけど、丸山もこういった考え方がいたるところに見えるということだ。

またそのうち本人の著作を読んでみたい。