ユング的悩み解消法を読んで

これはいい本だったと思う。

というか、ユングフロイトの心理学は、一度もそれらしい書物を読んだことがなかったので、知らない分野のことを知れたという意味で、かなり興味深かった。

著者の方もユングについてかなり詳しいようで、最近読んだ中では、間違いないく著者の方が専門家であるように思われた。つまり原書(ユングの本)の原書(ユングが参考にしていたと思われる本)にも当たっていることが伝わってきた。

本の内容としては、ユング心理学の紹介本とも言える。しかし、その後の研究や臨床結果も生かしてあり、「モバイルイマジネーション」という方法を使うことによって、読者の深層心理的な悩みを解決に役立ててもらおう。というものだった。

だいたいの構成としては、2人の「モバイルイマジネーション」を紹介して、これを巧みに例としながら、ユング心理学やモバイルイマジネーションの方法を紹介していき、最後には、一遍の小説を掲載し、これをさらに解析するというものだった。

ただ、この夢解きというか、イマジネーションの解析は、とてもではないけど、素人にできるものではなく、この本1冊では不十分な解析しかできないかなという気がした。しかし、これに関しては、著者の方も「簡単に使えるツール」を用意してくれていて、これはイマジネーションでの動きを、クンダリニー・ヨーガの段階になぞらえて、解いていくというか、基準を作って判断してく方法で、確かに「集合的無意識」を使う方法よりは、簡単に使えるツールであるとは思った。つまり、高次の行動様式が読み取れるようになってくるまで、イマジネーションを続け、無理に読み解かなくてもいいから、高次の行動が登場するイマジネーションを続ける。ということになる。また、高次の行動が出ていること自体が成果であると言える。

新しく知ったこととしては、ユングの心理学については、「深層」心理学で、これは間違いなく一線を画した分野なんだなと思った。次に思ったのが、陰陽思想である。ほんとに、嘘でなくて、ユングの心理学を習得したいのなら、易経を読み込んだほうが早いと思うくらい、陰陽思想の重要点がユングの理論体系の中核を成しているように思われた。まあ、陰陽思想も難しいので、直接ユング心理学を習ったほうが早いのかもしれないけど、いずれにせよ、陰陽思想を理解せずして、ユングを理解するのは不可能であろう。かなり密接な関係にあることは間違いない。

また、「集合的無意識」を使った深層心理の解析方法は、易で占いをする際のやり方に非常に似ている。というか、ほぼ同じと言ってもいい。

どのへんがどのように、陰陽思想と共通点が多いのかというと、まず、ユングの言うところの、集合的無意識は、私が言うところの道理と同じでものであるのだ。しかし、これらは陰陽関係、つまり、裏表の関係にあるので、個人の内側(集合的無意識)として認識するのか、個人の外側(道理)として認識するのかで、その認識の仕方もちょうど裏表のように逆に現れてくる。つまり、個人の内側だと無秩序であるが、個人の外側だと秩序なのである。だから、無秩序の調和ではなく、秩序と無秩序の調和が重要ということになる。だいたいのことはこんなところだけど、詳しいことは、またユングの本を読むことがあったら考えようと思う。とはいえ、こうゆうことはもう私の手を離れているので、今のところはこれ以上考える予定はないことになる。