謀略のイロハ イロハのイ

 「上兵は謀を伐つ」(最上の兵法は謀略をしかけることである)孫子より

 謀略の一番の要は、意外性である。

 「まさかそんなことしないだろう」「まさかそんなことできないだろう」「まさかそこまで考えていないだろう」「まさかそんなことにはならないだろう」という「まさか」ということこそ、謀略としてやる価値があるし、そう思われる謀略こそ本物の一番すぐれた謀略であると言える。

 謀略と言うのは、露見すると簡単に防がれる。隠れてやるからこそ意義がある。だから、人の心理の裏をかいた「まさか」ということこそ謀略としては良いのだ。と言うのも、この「まさか」というのは、まさに心理的「油断」に他ならないと言えるからだ。

 隙のない人というのは、常にあり得ないことすら想定している。そういえば、以前ホリエモンが「想定外だった」とか言っていたけど、彼はまさにこの心理的油断に陥って、想定できていなかったのだろう。つまり、「まさか」と思っていたから失脚したのだ。

 これまた孫子なのだけど、「兵とはキ道なり」とある。このキ道は騙すことと訳される。しかし、孫子を読んでみると、まあ、確かに騙すことにほかならないのだけど、むしろ「勘違いさせる」と言った方が的確のように思う。

 あと、この「まさか」で大勝利を収めたのが、ナポレオンのアルプス越えである。この話はかなり有名だと思う。

 それで、強い敵ほど常に、この「まさか」という心理的に裏をかいた手を打ってくるわけである。では、これをどう見抜くのか?という話になると、その一つ目が、この「まさか」こそを怪しみ、それを想定することと言えるだろう。