アメリカ史を勉強して

 アメリカ史自体から、何かアメリカの強さの秘訣みたいなのを明確に読み取ることはできなかった。

 ただ、言えることは、安全保障上アメリカが非常に有利な場所(太平洋と大西洋で他の列強国と空間的に離れていること)にあることが、第一次大戦、第二次大戦で活躍できた大きな理由であるとは思われる。

 アメリカと言う国は、実は宗教的に発達した国家であるということは、私にとって意外であった。アメリカに移住した者の多くは、プロテスタントが主なのであるが、それらの人のうちには自らの宗教的自由を求めて移住した者も少なくはないということだ。また、その宗教への敬虔な気持ちと、自らが受けた正教からの圧迫が「自由主義思想」を後押ししたことは間違いないと思う。ヴォルテールの「私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」という言葉に代表されるような思想が、建国、というか17世紀の移民開始当初から強くあったのであろう。

 アメリカのもうひとつの特色として、移民国家であることが挙げられる。その移民の規模も日本からはとても想像できないような大規模なもので、例えば、1991〜2000でも、約1000万人の移民を受け入れている。(1960からの統計では、この区間が一番多い、つまり、流入数は増加傾向にある)移民受け入れ政策は、アメリカに魅力がある限り、「優秀な人材の流入」を意味するのであって、移民の流入が、現在のアメリカ国力の源泉になっていることは間違いないであろう。

 また、移民国家であるということは、逆に言うと、信仰集団、民族集団としての結束があるということである。日本の朝鮮総連などのようなマイノリティー結束集団が、時として、メジョリティーを越えるような権限や発言力を持つことを想起すると、この結束集団としての団体行動がアメリカをかなり多様化させているであろうこと、またそれによる恩恵もあれば、弊害もあることが簡単に推測できる。

 紙面にはなかったが、アメリカは、その映画に代表されるような「家族愛」が発達した国であることも忘れてはならないだろう。ダイハードも結局は娘を助けるみたいな筋書きになって、それが達成される。ロッキーも、一番最後のセリフが、原版の英語だと息子に向かって「お前のために勝ったんだ」みたいなことを言っているのに、字幕や吹き替えだと「名誉のために勝ったんだ」みたいな台詞になっていて、文化の違いみたいなのを感じたのを覚えている。この家族を大事にする思想は、開拓時代において、自衛や生活の労働力としての家族の重要性、また、先の移民国家の特色、そして、これは勘だけどプロテスタントの信仰形態にその根源的理由があるような気がする。ただし、現在において、家族愛が希薄になりつつあるのではないか、ということは想像できないことも無い。

 また、産業形態として、1800年ころまでは、50%の労働力が農業に従事していたのに対して、最近では2%となっているらしい。これは効率化によるものとのこと。ただ、それでも、アメリカが世界でも希有な食糧輸出国であることを考えると、アメリカ国土の豊かさと言ったもを十分に伺い知ることができる。

 人種差別が無くなったのが、ほんとに最近のことだということを感じた。アメリカ史を勉強していて、いつキング牧師が出てくるのだろう?と思っていた。南北戦争の後に出てくると思いきや、その予想は見事に外れ、じゃあ、第一次大戦の後かと思えばまだ来ない。やっと登場したのが、1960年ころ、人種差別が無くなったのはこんな最近だったのか、と痛烈に感じた。そういえば、私が子供のころは、まだ、そういった差別用語が世間で当たり前のように使われていたし、私自身にもそういった人種差別思想があったことは否めない。フランスのルーブル美術館に行った時、黒人の女性が受付だったのだけど、その女性が英語で案内したとき、すごい知性と教養が感じられて、感心するとともに、黒人でもこういう教養があるのだと思ったことを覚えている。アメリカの(日本への)思想としての影響力の強さを改めて感じた気がした。

 あともうひとつは教育のことだ。一般教育が確立されたのも、恐ろしく歴史が浅い。たったの100年だということだ。これはイギリスにも共通している。日本は、明治維新のときからだったと思うから、日本が急速に発展した理由は教育にあったのかもしれない。福沢諭吉学問のすすめも、10人に1人が読んだと言うのだから、その時点で日本の識字率も相当高かったのだろう。

 自由-民主主義というのは小さい政府を求める。ということが分かったのも結構意外な収穫だった。全て個人の責任に帰するのが、individualな自由主義とそして民主主義の特性や本質であるのだ。

 もう一冊アメリカについての本を借りたのだけど、アメリカには見てみないと、つまり実際現地で生活してみないと分からない「何か」がある気がする。それが、これだけ分析できても満足できない理由であり、冒頭でも「明確に読み取ることはできなかった」と記した理由でもある。あと、改めてプロテスタント信仰について勉強することの必要性を感じた。

たまたま見つけた参考データ集
http://www.tt.em-net.ne.jp/~taihaku/geography/population/popindex.html