もう大戦は起きない

 戦争をやることに、まず、何のメリットもない。

 それに、もしそんな大きな戦争が起きたらどうなるか、私たちですら想像がつく。もうすでに、戦争の結果は、敵の屈服ではない。そのような大きな戦争の起きた時、その結果は、敵の破滅と自分自身の破滅、そして全ての破滅なのだ。

 この私ですら容易に想像できるこのことは、国家の主導者たる者の方が深く理解しているだろう。だから、もう大きな戦争は起きない。

 だが、私は軍事費を無くせ、などと言うナンセンスなことは言わないし、現にそこに巨費を投じているアメリカやその他の国を批判したりはしない。

 この使えない軍事力は、さらに使えない核に次ぐ威嚇として、また、お互いの縄張りを誇示しあう鳴り物として、それに見合うだけの影響力を持っている。恐らくだけど、そもそも、もう今の戦争は模擬戦だけで勝敗が見える状態になっていると思う。

 私が思うに、本来なら完全なる秘密事項であるはずの軍事力が、おおっぴらに公表されていること自体が兵法としてはおかしいのだ。本当に戦争をするならば、一番強い最強の兵器は、その存在すら隠さなければならない。一番強い最強の部隊は、その存在すら隠さなければならない。この最強の兵器や部隊は、戦局に応じて、相手の虚を突く形で投入するべきものなのである。「正をもて合い、奇をもて勝つ」とは、孫子の奇正編の一節だけど、相手の思いもよらないことをするのが奇と言われるもので、この一手が戦局を自分に有利なものとし、さらにこれが勝ちを生み出すのだ。だから、軍事力や兵器の性能などは極秘事項、一般に洩れてはならないのである。まあ、私が知らないだけで、そういった極秘事項があるのかもしれないけど。でも衛星で全て丸見えの現在では、こういったことをするのは難しい。そう言った意味でも、大規模な戦争は模擬戦だけでその勝敗がほぼ決まる。そうなってくると、むしろ自国の強さとしての、軍事力の情報をできる限り流した方が有利になる。すると余計に模擬戦だけで、影響力の誇示は十分となり、実際戦争をする必要はない。だから、そいういった大きな戦争はもう起きないだろう。と思うのだ。かと言って、それの影響力は依然としてあることも事実だから、軍事力を放棄せよとは言わない。