日本の産業構造について 水平分業と垂直統合、専門特化と汎門凡化

今日、NHKラジオ「ニュースの魂」を聴いていて、このことについてインスピレーションが舞い降りた。(大したことないが…)

このニュースは、かなりの専門家が呼ばれて、歯に衣を着せないことを言うので、とても面白い。テレビほど影響力がないラジオだからこそできる、とてもいい番組だと思っている。多分、このニュースに呼ばれる専門家は、絶対テレビには呼ばれないタイプだと思う。なぜそう思うのかというと、「えっ、そんなこと言っていいの?」的なことも平気で言うからである。とにかく、そういった独自の見解を持った専門家が呼ばれることが多い。だから、もちろん見識が甘いという意味でハズレのときもある。

これほどに絶賛しているのであるけれど、会社の帰りのわずか5分しか、このニュースを聞いていない。けれど、とにかく、そのときの一番の話題についての、ちょっとマイナーと思われる専門家が呼ばれるから、いろいろ面白い。

今日は、日本の産業構造について語っていた。アップルと日本のソニーパナソニックを比較するような話をしていたのだけど、それを聞いてたときに主題のことを思いついた。それで、結局、「日本企業では、意見を言う人除外されるから、新しいことができないんですよね」的な擦り切れた議論になったとき、ちょうど家に着いたので、それ以後は聞いていない。

では本題に移ろう。

日本の産業は、その多くが、垂直統合と汎門凡化を組み合わせたものである。

この結論を語るに当たって、ここに出てくる聞き慣れない用語、「水平分業と垂直統合」「専門特化と汎門凡化」について説明したい。 参考:英単語の紹介:「水平分業:Horizontal Industry System」「垂直統合:Vertical Industry System」 「専門特化:Specialization」 「汎門凡化:Formalization」

垂直統合とは、コンツェルンみたいな産業構造の事で、トヨタを例にとると分かりやすいと思う。トヨタプリウスの新型ができるとき、プリウスはこのようにして大量生産される。つまり、トヨタ本社で「全体の設計図」ができて、それをもとにしてトヨタの子会社が「部品の設計」をする、そして次にトヨタの孫会社が「部品の部品の設計」をして、さらにひ孫会社が「部品の部品を作る部品の設計」をする。こうしてできた設計図群が、またトヨタ本社へと逆流していき、こうしてやっと「新型のプリウス」が生産段階に移行することとなる。だから、全ての主導権・イニシアティブは、トヨタ本社から垂直的、上から下、下から上という流れであるのだ。これは、設計だけに関わらず、生産工程の部品自体の流れでも同じことが言える。

これに対して、水平分業とは、横のつながりの産業構造の事である。パソコンを例に取るとわかりやすいと思う。パソコンの心臓部であるCPUはインテルが独自に開発する。システムの心臓部であるOSはウインドウズやアップルが独自に開発する。画面である液晶はシャープが独自に開発する。パソコンで実際使われるソフトはgoogleが独自に開発する。このように、パソコンで使われている部品は、そのほとんどが、「独自に開発されたもの」である。にも関わらず、Dell富士通は、この「独自に開発されたもの」をうまく組み合わせて高性能パソコンを作り出す。このように、生産の主導権・イニシアティブが、一か所から上下運動せず、むしろ横に動く産業構造を水平分業と言う。

次は専門特化と汎門凡化についてである。上の話は、私自身何度も聞いたことのある話である。だが、この専門特化と汎門凡化の違いについては、あまり聞いたことが無い。まあ、私が一番のりということはないだろうが、汎門凡化という言葉は、今私が考え付いたものなので、世間一般では別の言葉で示されているかもしれない。とにかく、そのことについて説明してみよう。

私が反応した個所は、専門家のこの二つの言葉だった。
「アップルなんて言うのは、スティージョブズみたいな優秀な人が、同じことについて一日中考えているわけなんですよね」
「日本の例えば、パナソニックとかソニーは、事業が手広いんですよね」

これを聞いたとき、ピーンと来た。

つまり、アップルとか、googleとか、IT関連で最近急激に伸びた会社は、すごい「専門特化」しているのである。アップルだと、IOSと端末、googleだと、検索エンジンである。「えっ、何がどう日本の企業と違うの?」と思われるだろうから、ここからさらにこれを突っ込んで説明したい。

例えば、パナソニックが専門特化しているのは、「家電」である。
ソニーが専門特化しているのは、「家電のうちのメディア関連のもの」である。
トヨタが専門特化しているのは、「自動車」である。
シャープが専門特化しているのは、「液晶とその関連商品」である。

アップルやgoogleとの違いに気が付いていただきたい。つまり、専門特化している領域が広いのだ。

もうひとつ、ヒントと言うかを出そう。シャープは、事業を「液晶」だけに絞って業績を上げ、株価を値上がりさせた。

これで、「汎門凡化」の意味がだいぶ分かっていただけると思う。つまり、日本の企業は、専門分野の特化がかなり遅れているのだ。パナソニックなんて良い例で、テレビも作れば電池も作るし、洗濯機も作れば冷蔵庫も作る。作っているものの中心が「家電」という汎門なのである。

これに対して、アップルは、常に真ん中に「IOSとそれの入った端末」がある。全ての事業は手広いようであるけれど、この「IOSとそれの入った端末」に関する枝葉の事業でしかない。こういった意味で、アップルは「IOSとそれの入った端末」にかなり専門特化している。

そして、このように、「専門特化」された商品の方が売れるのは、当たり前のことでもあるのである。なぜかと言うに、人類の文明と文化がかなり発達して、全てがかなり難しくなっているからである。だから、汎門すると凡化(平凡化)せざるを得ない。なぜなら、一つの専門分野でも習得しようと思ったら、相当の労力と時間が必要だからである。だから、独自のものを作るためには、事業をできるだけ集約して一つに専門特化しなければならないのだ。

専門特化は、むしろ、売れる総量を減らすような印象を与えるが、現在ではこれが全く逆となっているのである。だから、大げさなことを言えば、トヨタプリウストヨタとクラウントヨタに分かれて、事業展開した方が、いい商品ができる可能性が高まることを期待できるのである。

そして、この二つの対比を並べたのは、意味が無いことではない。水平分業は専門特化と、産業構造的相性が抜群に良いのである。少し考えていただければ、自然に効率が求められる形になっていることが分かるであろう。これに対して、垂直統合と汎門凡化は、大して相性が良くないにも関わらず、日本で維持され続けている産業構造なのである。なぜそのようなことが起こったかというのは、まさに、文明と文化の細分化及び深淵化によるのであろう。

日本の産業構造について2 -汎用般化と専用特化
http://d.hatena.ne.jp/keigossa/20130627/1372309341

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