世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのかを読んで

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 世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか ダイヤモンド社 著者 野口悠紀雄



 この本も、ダイヤモンド・オンラインに連載していた内容を本にまとめたものみたいだ。今読んでみた感想は、(私にとっては)あまり読む価値のない本だ。というのも、数字的解析が書面のほとんどを覆っていて、仕組みさえわかれば大体のことを予測してしまう私にとって、それはあまり意味をなしていないからだ。それに、私ならば、仕組みさえ分かれば、自分で数字(データ)を集めてでも、自分の推測を立証することもできる。だから、この記事を読む人というのは、1・自分で解析するのが苦手な人、2・最新の詳細な情報を知りたい人、3・どんな些細なことでも知ろうと思っている人、がターゲットにされていると思われる。とすると、ダイヤモンド・オンラインを読んでいる人は、「単なるエセ経済かぶれ」か、「相当トップレベルのそういった情報を常に必要とする人」であると推測される。申し遅れたが、これらの数字を伴った経済用語が私にとって暗号に見えるという事実もある。

 ただ、そういった形式であることを頭において読めば、有益ではある。新聞と思えばいいと言うとわかりやすいかもしれない。だから、そのような読み方をすることにした。その中で、流石経済学者、というところだけ記していこうと思う。


※あくまで私の観点での抜粋です。ここに書かれている内容よりはるかに有益なことが本書に書かれています。是非本書を読んでください。


第一章 奈落の後は停滞
 私は最初にあとがきを読んだので、この書で一貫して言いたいことをある程度知ってはいる。それで、それを最初にまとめてしまう。
 日本の経済は回復しない。それは何故かと言うに、日本の経済の浮き沈みはアメリカやその他の先進諸国の消費の浮き沈み(外需)に依存しているからだ。その理由のひとつとして、賃金がある。物価の安い新興国にどれだけモノを売ったって、物価の高い日本にその恩恵があるはずがない。例えるなら、封建時代における貧乏な小作農たちに、オランダ製のカステラを大量に買えというような話だからだ。冷静に考えれば簡単なことだ。こんなバカなことをする貿易商がいただろうか?
 これに加えて、日本の経済体制もある。つまり、外需依存型なのだ。例えば一番分かりやすいのは自動車みたいなのだけど、今は、日本の工場がフル稼働すると、車を欲しい日本人が2倍にならないと生産された自動車が全部日本国内で消費されない。(数字は大げさ)という話になっているのだ。だから、必ず外需が必要なのだ。企業は、その設備と人員を現実として抱えてしまっているからだ。
 この人員についての話で、「企業内失業」という言葉がずっと引っ掛かっている。別の言葉で言うと「過剰人員」と言うことなのだけど、奇しくも日本の古き良き終身雇用制度と年功序列制度がこのproblemの大きな要因となっていることは言うまでもない。

 それで、今読んで、なるほどと思ったのは円高の仕組みだ。野口氏は、今が円高なのではなくて、今までが「円安バブル」だったのだ。と言う。これは、私も感じていたことだ。数年前ヨーロッパに行った時、物価感覚が明らかにおかしかった。1ユーロは110〜120円くらいの感覚と思ったのだ。(当時は1ユーロが170円だった)つまり、今の為替でほぼ同水準の物価感覚になったくらいだと思うのだ。それでその仕組みのタネを金融面から説いている。これまでは、低金利であったのが日本だけだった。だから、円を運用するよりドルやユーロを運用する方が金融的に有利であった。そして、異常な為替介入もあった。と言うのだ。私も、現在の「円高」がむしろ正常な円の評価ではないかと思っている。これは、私の神算ではじき出していたことなのだけど、投機や投資だけで、ここ最近円が急に高くなったのはおかしいと思っていたからだ。それに日本の経済や政治が安定していて、そのことによって市場のお金が日本に集まったという理論は明らかにおかしいと思っていたからだ。私が海外の資産家なら絶対に円など買わない。どう見ても、政局不安定、そして震災もあった。長い目で見た場合リスクしかない。同じ高リスクなら自国の通貨と運命を共にするだろう。だから、あれほど急激に為替が動くためには、投機や投資だけでなく、一般家庭の貯蓄が、何らかの必然性のもとに動かなければありえないと思っていたのだ。その必然性とは、日本の低金利に対する海外の高金利であったのだ。思い出していただきたい、外資系の保険会社が日本で幅を利かせ始めたのはちょうどそのころ(5〜10年前くらい)だったではないか。この融資の分と、介入の分だけ「異常な円安」「円安バブル」が起きていたのだ。これにインフレとデフレの相対価値理論を加えれば、ここ最近の為替の動きも納得できる。自分の理論と感覚と神算が正しかったことが分かったので、思わず力説してしまった。とにかく、今の円高が異常なのではくて、今までの円安が異常だったのだ。


第二章 日本が回復できない理由
 日本の経済が回復しない原因は、製造業の比率が高いということ。言われてみれば簡単なことではある。社会システムが同じ(資本-民主主義)なら、新興国は、大まかには今の先進国と同じ道筋を辿る。だから、とりあえず工業化が進むのである。すると、低賃金で作られた廉価の新興国工業製品が世界市場で幅を利かしだす。そうなると当然、それに押し出される形で、高賃金で高価な先進国工業製品は世界市場からシェアを減らしていく。つまり、モノづくりは安定しているという考えは幻影なのである。

 昔書いたこの日記を思い出した。為替もそうだけど、我ながら自分のセンスに驚いてしまう。この次にもトヨタについての日記が書かれているけど、そのあとまんまとアメリカでやられたしなぁ。我ながら、なんか私には卓越した先を読む力があるのではないかと思ってしまった。
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 企業内失業について、驚くべきことがわかった。日本の失業率は、この企業内失業も含めると実に9%になるとのこと。この辺のことは全く気付いていなかった。しかも、それが雇用助成金という形で、政府によって「隠蔽」されているとのこと。何度も言うが、「隠蔽」は一番いけない。

 GDPには、固定資本減耗という箇条があるとのこと。これも全然知らなかった。しかも、GDPの20%がこの固定資本減耗だというのだ。どういうものかと言うと、例えば、20万円のPCを買ったら、これが10年持つとすると、2万円はこの固定資本減耗として、GDPに計上されるということになる。だから自由に処理できる本当の実質的なお金の部分は、GDPの約80%ということになる。すると、製造業の円安バブルによる過剰投資の相乗効果を考えた場合、固定資本減耗がGDPに含まれていることの重大性は明らかだ。

 あと、ほーと思った考え方は、金融とかITの企業内投資の話だ。金融やITは、“モノ”への投資率が低い。逆に製造業は“モノ”への投資率が高い。“モノ”に投資することを簡単に例えると、例えば、男の子供が3人いる家庭での食べ物への需要はすさまじい、だから、この需要を満たすため、冷蔵庫というモノへの投資をしなければならい。下手すると大型冷蔵庫が2台必要だろう。(あくまで私の食べる量から計算しています。)するとどうだろう、子供が巣立ったとき、大型冷蔵庫は電気代を無駄に食う単なる無用の長物ということになる。だから、モノへの投資は実はリスクが大きい。これに対して、人への投資、この家庭を例にすると、例えば、母親が仕事をしないで、毎日買い物に行ったり、少し高いかもしれないが宅配型の食材をメインとするなら、投資はその母親の手間賃や宅配料ということになる。これだと、子供が巣立ったとき、無用の長物は何も残らない。だから、そのときの出費は多いかもしれないが、喉元過ぎれば熱くないで、結果としてリスクは少ない。基本と言えば基本だが、「設備があるから安心」という考え方もあるが、「設備を維持する不安」という考え方もしなければならないということだ。


第三章 激減した企業利益
 製造業が駄目なことを説いている。もう、製造業が駄目なことは分かったので、データとかは私にとってあまり見る価値もない。
 話もそれだけだけで、終わると思いきや。最後に面白い話があった。JALと日本は同じだと言うのだ。野口氏は、JALの破綻を、ある端緒から見抜いていたらしい。そして、JALの再生を願って本を出したけど、JALはその破たんの原因たる従業員本位の経営からやはり脱却できなかった。だから、JALが破たんしたのは、日本人誰もにとって全くサプライズではなかったと言うのだ。そして、それを日本という国自体にも当てはめている。日本がいつか破たんするのは明白だし、それが起きた時、それは日本人にとってサプライズではないのだと。

 つまり、日本が破産手続きをしたとき、誰もが「ああ、遂にこの日が来たか」と思うだろうと言うのだ。事実おおっぴらに、「日本は破たんする」と誰も言わないが、それは誰もが感じているのだろう。そして、その目を覆いたくなる現実、その目を覆いたくなる正しい推測を、誰もが淡い希望と強烈な願望でごまかして、何の手当てもしないまま覆い隠しているのだ。だから、私は言う。日本も経済と言われている社会システムも全て破たんする。それは遠い将来ではない。ほんの数十年先だと。現実は苦しみ以外の何者でもないのだから。


第四章 問題山積の自動車産業
 もう日本の自動車産業に未来がないことは、私としては十分に分かった。ただ、その現実を見つめることができない人のために、念を押している章と言っても過言ではない。具体的にはGMクライスラーの破綻の経緯が、日本の状況と全く同じになっていることを言っている。そして、中国などの新興市場に売り込むことの愚かさを説く、ただ、これには多少野口氏のバイアスがあると言える。この著のデータなど見る限りでも、現時点では、まだそこに企業としての収益価値はある。しかし、日本経済と見た場合、それは全く関係ないという感じだ。つまり、新興国市場で収益を上げるためには、新興国で生産活動をしなければならないのだ。そして、それは技術の国外流出を招くもの以外の何者でもない。

 あと、私が、社会を読む上で大事だな。と思った考え方があった。それは、「垂直分業」から「水平分業」への推移の話だ。これは、製造業の特に部品部門において、企業形態がコンツェルンか、トラスト・カルテルかみたいな話だ。例えば、従来の自動車のような機構の難しい生産物だと、まず、部品も含めた設計ありきで始まる。だから、この大本の設計書を持つ自動車メーカーが全ての主導権を握って、コンツェルン形式の(部品)産業体系を形作ることになる。これに対して、例えば、コンピューターだと、部品ありきの、それらの組み合わせで最終生産物ができる。PCに詳しい人ならこの意味がよく分かっていただけると思う。例えば、富士通の主力PCでも、メインの部品は、ご存じのように他社製のものだ。この他社製の部品をうまく組み合わせたのが高性能PCであって、部品ありきで、部品の汎用性が最大限生かされた産業形態であるのだ。これは、新しい時代を象徴するひとつの事象だと思う。


第五章 回復するアメリカ経済
 アメリカの経済が回復していることを述べている。公的資金流入もほぼ3年で償却されたとのこと。つまり、リーマンショックは全治3年であった。とのこと。しかし、インサイドジョブを見た私として、この年月は納得できない。この陰には、数多くの債務者がいることを忘れてはならない。深刻な後遺症が、データや、表には現れない形で大きく何かを害しているのだ。彼ら、換言すると、前のアメリカデモでいう99%の側の人たちと、影響は小さいとはいえ、全世界の全ての労働者は、未だに金融と経済の複雑なシステムに搾取され続けているのだ。詳しくどんな仕組みになっているかわからないけど、絶対に何かタネがあると思う。全世界に恐慌を呼び覚ました津波震源地とその最大の患部が、たったの3年で完治するはずがない。この、3年で償却したというデータには怒りすら感じる。

 そして、また為替の定説を崩す確かなデータが出てきた。これを見れば、どんな頑迷な人でも、円が世界から見放されていることを信じるだろう。そして、ドルがどれだけ信用されているかということも。だが、私は言う。ドルは信用できない。ドルが破たんしたとき、本当に全て破たんするだろう。一番初めにその信用を疑った国債国債の存在自体がおかしいと私に気付かせた国債は、紛れもなくアメリカ国債であるのだから。

http://lowcostinv.blog109.fc2.com/blog-entry-35.html
数値自体は野口氏の著書のものとほぼ同じだ。

 とにかく、マスコミの流す経済金融の定説など、何らかの陰謀による嘘か、無知による間違いでしかないだろう。まあ、私のように、破たん、破たん、と破たんを望むような発言ばかりするのも問題があるが、よほどの大変革をしない限り本当に全て破たんすると思う。最近野口氏の本を読んで、自分の感覚がわりと正しいと分かり、余計に危機感とかを感じるようになった。まあ、何の権威もない私が言っても、クレイジー(きちがい)だと思われるだけかもしれないが、それが本当に起きた時、私の言いたいことの重要性を皆が感じるだろう。そして言うのだ。「どうすることもできなかったんだ、あのときそんなことは信じることはできなかったんだ」と。まあ、私は一人でもやる。


第六章 中国とどうつきあうか
 最近は定説化してきた中国への経済批判と言ったところか。

 中国は完全なる輸出産業主体国家で、結局のところ高為替の先進国への輸出が、中国経済の全てと言っても過言ではないとのこと。そして、日本としても、その輸出品のための輸出を中国にしているのであって、結局日本経済も先進諸国の消費動向に左右されるとのこと。そして、その最たる国は、超浪費国家アメリカなのである。

 中国の不動産バブルについて経済・金融面からも解説している。が内容は難しくていまいちわからない。重要なことは、中国の不動産高騰はバブルであって、いつかははじけるし、それが日本経済に大きな影響を与えるであろうということ。

 中国の経済データに疑問が多いことを言っている。これは、まあ、ちょっと疑うことを知っている人なら誰でも感じていることだろう。具体例を読んでいて、国家としてのあまりの稚拙さに思わず笑ってしまった。

 最後は中国と対決したグーグルを褒めて、中国政府を批判している。これは、私とも、というかほとんどの人とも同じ一般的な意見だろう。だが、言うまでもないけど、それだけに重要なことである。自由民主主義でない自由経済などあり得ない。絶対にどちらかが破たんする。ひとつ私と違う見解がある。それはインターネットを自由主義の象徴としているところだ。私はむしろこれを新しい時代の象徴と思っている。というか分かった。むしろ自由民主主義が円熟したからインターネットが出てきたのだ。これが、自由民主主義における最大最後の革新であり、一番の文化的、そして文明的産物と言っても過言ではないのだろう。だからこそ、これが、全ての今の終わりであり、全ての未来の始まりなのだ。

 あと、グーグルの検索システムの仕組みについて述べている。リンクが多いと検索されやすいらしい。


第七章 経済対策を検証・評価する
 簡単に言うと、民主党自民党の政策を基本的には全部引き継いでいるとのこと。そして、それが全部、緊急避難であって、例えるなら、「台風が来るぞ〜」「おお、とりあえず川から離れとけ〜」という感じだと言う。結局根本的に何も変わっていなくて、本来望まれる政策と言うのは、「台風が来るぞ〜」「おお、堤防作ったし、いざというときの引っ越し先もあるやないか、心配すんな」という政策なのだ。

 あと、日本の予算が「まともに面と向かったら気が狂いそうになるもの」と言っている。歳出に対する歳入の4割しか税収が無いなんて、いやおかしい。ほんとに。それが自分の家計だと思えば、その危なさとやばさがわかると思う。生活するために、1年100万円かかるとして、そのうち60万円を借金で賄っているなんて、異常とかそうゆう言葉で言いつくせるレベルではない。だから、そもそも国債があること自体おかしいのだ。日本破たん説も、ほんとうに現実味を帯びている。しかもこれに輪をかけるようにデフレとか。

 中国のバブル決壊、TPPでの失策(所詮日本の官僚は外に弱いので失策すると思っている)が重なるとほんとに10年以内に日本破たんするかもしれない。私はアメリカの破綻の方が早いと思っていたけど、日本の破綻の方が早いかもしれない。


第八章 日本が進むべき道は何か
 新興国シフトは日本の自殺行為、これは十分に分かった。

 内需主導型の経済へ。というか、正確に言うと現在の経済ではこの方向性しかない。何故かと言うに、もう工業製品はどの先進国でもありきたりであるのだから。だから、高為替の自国で給料を生み出して、その所得を国内で消費して、金を回すしかない。経済とは、結局「金は天下のまわりもの」というように、まわせば基本的に活性化するのだから。だが、日本は資源を輸入しなければならない、輸入するのに対して輸出が無ければならないのではないか。という疑問がある。これに対して野口氏は、対外純資産225兆円から得られる所得1.5兆円、自動車輸出の二倍の金があるという。そして内需の内容はというと、介護だと言う。これは、確かにそうかもしれない。

 野口氏は、そういった真の政策をしない日本政府を批判している。確かにそうだと思う。現に成果は全く上がっていない。

 だが野口氏の案が全て採用されてもうまくいかない気がする。やはり私は経済という枠組み自体の限界を感じるからだ。野口氏の方策も納得できるものの、そんな計算通りにうまくいくはずがないというような気がするのだ。良く読めば良く読むほど、根本的解決でない単なる机上の計算の気がする。ただ、野口氏もそのことは十分感じているのではないかなと思う。


 全体を通しての感想

 わりと分かりやすかったと言えば分かりやすかった。ただ、数字とか経済専門用語が多いので、途中で眠たくなったりする。そうゆう部分はかなり飛ばして読んだ。経営者とか、投資家(投機家でない)向けに書いたものかなと思う。日本の経営者や投資家は必読の本であろう。あと、政治関係者も読んで勉強してほしい。野口氏もそうだが、私も投機はあまりすべきでないと思っている。